建物のライフサイクルを管理するサブスクサービスの提供開始、大成建設:ICT
大成建設は、クラウドを利用し建物のライフサイクルを管理するサービス「LCMC(LifeCycle Management Console)」の販売形式に、業界初となるサブスクリプション方式を導入し提供を開始した。なお、今回のサービスは、2021年12月にβ版の先行提供を行い、実証データを基に機能改善を進め、2022年夏中に正式版を提供する見通しだ。
大成建設は、クラウドを利用し建物のライフサイクルを管理するサービス「LCMC(LifeCycle Management Console)」に関して、サブスクリプション方式で提供を開始したことを2022年8月12日に発表した。
「Lilz Gauge」や「CAFM」とも連携する予定
近年、建物や社会インフラの老朽化に伴い、保守業務の重要性が高まっている。一方、建物管理の現場では、現状でも紙による点検確認や経験に基づくトラブル対応などが多く、効率的な保守管理が行えない環境にある。
そのため、建設時に生じる設計や工事費といったイニシャルコストより、建物竣工後の保守管理に関するランニングコストの方が高くなるとされており、建物ライフサイクルコストの低減では、保守管理を効率的に行うことが求められている。
こういった状況を踏まえて、大成建設は、不動産価値の向上や建物保守業務の効率化、利用者満足度の最大化を目的に、2019年10月に日本マイクロソフトと協業を開始した。
2021年2月には、BIMとIoTを融合した建物プラットフォーム「LifeCycle OS※1」をMicrosoft Azure上に構築し、LifeCycle OSを建物管理に運用することで、多様なサービスやデバイスを連携させ、建物機能の継続的なアップグレードを実現するための基盤として活用している。
※1 LifeCycle OS:BIMと建物の運用管理データを統合管理するシステム。
今回、大成建設と日本マイクロソフトは、LifeCycle OS上で稼働するクラウドサービスとしてLCMCを開発した。LCMCは、LifeCycle OSから取得したIoTデータを活用して、建物の管理を自動化する。
具体的には、LCMCは、「点検管理システム」「インシデント管理システム」「建物・設備管理システム」で構成される。点検管理システムは、1台のスマートフォンもしくはタブレットで設備点検や清掃点検の結果を見られるようにする他、建物規模や用途に応じて点検内容を自由に組み替えられ、オフィスに居ながら対象の建物状況をリアルタイムに確かめられる。
さらに、設備機器の巡回点検効率化クラウドサービス「Lilz Gauge※2」とLCOS標準サービスであるARアプリとの連携も予定している。
※2 Lilz Gauge:低消費電力IoTカメラと機械学習を活用しアナログメーターなどの目視巡回点検を簡単にリモート化できるLiLzのクラウドサービス
インシデント管理システムは、スマートフォンやタブレット、PCで操作でき、設備、清掃、警備などのビルメンテナンスに関わる全てのインシデントを登録・管理し、管理者がリアルタイムにインシデントの状況を調べられる。
建物・設備管理システムは、建物と設備に関する情報や設備機器に関連するインシデントおよび点検の履歴、センサーで取得したIoTデータなどの情報を一元的に管理する。また、大成建設の不動産情報管理システム「CAFM」とも連携する見通しだ。
現在、大成建設は、東京都千代田区のオフィスビル「御茶ノ水ソラシティ」で先行提供していたβ版による現場実証データをフィードバックさせて、サービスの機能改善を進めており、2022年夏中に正式版の提供を開始する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ロボット犬で建設現場を遠隔巡視、大成建設が首都圏の現場に導入
大成建設は、Unitree Robotics製の電動四足歩行ロボット2種類を遠隔で操作し、建設現場を巡回監視する現場管理システムの実用化に成功した。 - 建物内の磁場分布を利用した新たな屋内位置測位システム、大成建設
大成建設は、スマートデバイスの内蔵センサーと建物固有の磁場分布を活用することで、無線通信機器を設置することなく、屋内での所在位置を高い精度で特定する位置測位システムを開発した。新システムは、空港や商業施設の誘導案内、医療施設における患者の見守りなど、人の位置情報を可視化し、建物利用者の利便性や安全性を向上させられる。 - 大成建設がMSと協業、初手は地震による建物への影響や作業員の現状などを“見える化”
大成建設は、運用・保守事業も行える体制を整備し、これまでの建物の引き渡しだけでなく、建造物のライフサイクル全体を収益元の対象とするストック型ビジネスの展開を検討している。 - ファシリティの現状を知り、CAFMを活用するためには?
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、ファシリティの現状を知り、CAFMを活用するための術を説いていく。