三菱電機の“ドップラーライダー”で、丸の内エリア一帯の風を可視化:導入事例
三菱電機と三菱地所は共同で2022年8月1〜5日、風況(風速・風向)を計測する装置「ドップラーライダー」で東京・丸の内エリアの風を可視化する実証実験を行った。
三菱電機と三菱地所は共同で、東京・千代田区の「常盤橋タワー」と隣接する「TOKYO TORCH Park」に風況(風速・風向)を計測する「ドップラーライダー」を設置し、丸の内エリアの風を可視化する実証実験を2022年8月1日に開始した。
2種類のドップラーライダーで丸の内エリア一帯の風を可視化
ドップラーライダーは、鉛直上向きにレーザー光を照射することで、単一周波数のパルスレーザーによって大気中のちりや微粒子の動きを捉え、数百メートル〜数十キロ先の風速や風向きをリアルタイムに測定する機器。
現在、歩行者をはじめ、建設作業やビル外窓清掃などの高所作業従事者の安全確保、街中でのイベント参加者の快適性、ドローンや空飛ぶクルマなどの社会実装に向け、風況データの効果的な活用が注目されている。
特に、高層ビルが立ち並ぶ都市部では、近年の気候変動の影響もあり、風の影響が予想しにくくなっている。高さ日本一の超高層ビルとして2027年度に竣工予定の「Torch Tower」などの開発が進む常盤橋エリアや東京の文化的かつ経済的な中心の大丸有エリアでも、風が安全性や快適性に大きく影響するとされる。
今回の実証実験では、常盤橋タワーの地上約212メートル屋上に半径1.5キロの風況を計測できるスキャニング型ドップラーライダーを設置。常盤橋/大丸有エリアを含む、広範囲の風況を計測した。同時にTOKYO TORCH Park内の地上に、高さ250メートルまでの5メートルごとの風況を測れる鉛直型ドップラーライダーと超音波風速計を置いて、常盤橋エリアを中心に上空を測った。
今後は、三菱電機のAI技術「Maisart(マイサート)」と組み合わせた「風況データソリューション」で得られた計測結果に基づき、さまざまな課題の解決につながるデータソリューションを開発することで、同エリアのエリアマネジメントの高度化や、安全・安心で快適なまちづくりの実現に役立てるという。
三菱電機は2022年3月18〜20日にも、eVTOL(空飛ぶクルマ)離着陸場の整備を目的に静岡県御殿場市の御殿場プレミアム・アウトレットで実証実験を行っている。これまでの実証データをもとに実用化に向け開発を進めている風況データソリューションについて、2023年度以降の提供を目指すとしている。
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