【新連載】住宅建築時になぜ地盤調査が重要なのか?〜その目的と歴史〜:災害大国ニッポンを救う地盤調査技術(2/2 ページ)
本連載では、だいち災害リスク研究所 所長の横山芳春氏が、地震や液状化などの予防策として注目されている地盤調査について解説します。第1回となる今回は、地盤調査の重要性を説きつつ、地盤調査の歴史を振り返りながら、現在主流となっている調査手法について取り上げます。
住宅地盤調査の歴史と調査方法
地盤調査の歴史を振り返ると、戸建て住宅の地盤調査は、1980年代に大手ハウスメーカーが先駆的に始めた。地場のホームビルダーや工務店に、戸建て住宅の地盤調査が普及したのは2000年以降となる。普及の契機となったのは、2000年4月に政府が施行した「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で、同年6月に行われた建築基準法の改正によって、事実上地盤調査が義務化されたといえる。
現在、主流となっている戸建て住宅向けの地盤調査法は、従来の手法と比較してコストが低く、短時間で狭い土地にも対応する「スクリューウェイト貫入試験」だ。
スクリューウェイト貫入試験(SWS試験)
スクリューウェイト貫入試験は、1954年頃から日本国内で導入がスタートし、当初は堤防の強度調査などに活用され、1976年にJIS規格に制定された後、住宅の地盤調査でも利用が進んだ。
以前は発祥地であるスウェーデンの名称を採り入れて、「スウェーデン式サウンディング試験」と呼称されていたが、2020年10月26日付で、JIS規格における名称がスクリューウェイト貫入試験と変更された。このため、古い地盤調査報告書ではスウェーデン式サウンディング試験と記されていることがある。さらに、スウェーデンから持ち込まれたが、取り扱いの容易さに加え、機動性が高いことなど日本国内の住宅事情にマッチし、住宅建築前の調査手法として特化した。
スクリューウェイト貫入試験は、略称がSWS試験あるいはSS試験で、住宅地盤調査の大半で採用されており、北欧のスウェーデンで鉄道の地盤調査方法で用いていた手法をベースにしている。特徴は、段階的に重りを載せる試験と、一定の重量がある重りを積載して回転をかけていく試験で構成され、両試験が同一の試験機材で行える点にある。
スクリューウェイト貫入試験の作業手順は、棒(ロッド)の先端にドリルのようなパーツ(スクリューポイント)が付いた機材を地面に突き立て、調査員が人力で重りを載せていき、所定の重さで沈まない場合はハンドル部分を二人で回転させていく。
このように、調査員が機材に重りを載せてハンドルを回して地盤の記録をとる「手動式」の調査方式(図2)が基本だが、回転貫入の構造が自動化されている「半自動式」の機材や結果の記録が自動化されている「自動式」の機材を利用するケースもあるほか、重りの代わりに油圧などによる荷重をかけることもある。
手動式のスクリューウェイト貫入試験は、1枚当たり約25キロ(半分の約12.5キロを1枚としている機種もある)の重りの取り外しやハンドルの回転を人力で行わなければならないが、現在でも主に狭い敷地や高低差のある敷地などで使用されている。
ただし、いずれの方法も土中に差し込んでいく棒は、人が1メートルごとに継ぎ足していかなければならないだけでなく、石や硬い層に差し当たった際はハンマーなどで棒を打撃して打ち抜き、土中に打ち込んだロッドを引き抜く(機種により一部自動化)などの人の手による作業もあり、「全自動式」であっても完全に自動化されていない。
また、スクリューウェイト貫入試験以外の地盤調査法には、「ボーリング試験」「標準貫入試験」「ハンドオーガーボーリング」「表面波探査法」がある。ボーリング試験は、適用した地盤の土を採取でき、主に大規模ビルやマンションの地盤調査で導入され、とくに3階建てまたはRC造の集合住宅を建築するときに利用されることが多い。
標準貫入試験は、ボーリング試験と併用される手法で、深さ1メートルごとの地盤における硬軟(N値)を調べる。ハンドオーガーボーリングは手掘りで表層部の土を採取して地盤を観察し、表面波探査法は地面に衝撃を与えた振動波が地盤を伝わる速さを測る。
第2回目では、スクリューウェイト貫入試験で得られたデータがどのような調査報告書となって、地盤改良工事の必要/不要の判定がどう判断されているか、地盤改良工事や地盤の保証(補償)を含めた地盤調査ビジネスの流れ、地盤調査の課題および今後の住宅における地盤調査の発展について解説する。
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