3Dプリンタで橋をつくる、大林組が実証に成功:情報化施工
大林組は産業用ロボットを活用した、3Dプリンタを開発。特殊なモルタル材料をで中空構造のブロックを製造し、さらにそれを利用してアーチ状のブリッジの製作に成功した。
大林組は特殊なセメント系材料を用いて、型枠を使わずに建築物や土木構造物の部材をさまざまな形状で自動製造できる3Dプリンタを開発したと発表した。さらにこの3Dプリンタを使って中空の曲面形状のモルタルブロックを複製製造し、これらを組み合わせたアーチ状のブリッジを製作することにも成功した。
近年、石膏(せっこう)や樹脂などを“インク”としてさまざまな物を積層造形する、3Dプリンタの利用が広がっている。現時点で建設業界では、建築物の模型製作などに使われる程度だが、将来、建築物や土木構造物への適用も期待されている。特にこれまでセメント系材料で製造する場合に多くの時間と労力を要した、曲面や中空など、さまざまな形状の部材を自在に製造できれば、大きなメリットが見込めるからだ。
一般的に建築物や土木構造物にはコンクリートをはじめ多くのセメント系材料を用いるが、これらは十分な強度に達するまでに一定の時間が必要になる。そのため、所定の形状と寸法を保つための型枠が必要となるなど、3Dプリンタの利用には多くの課題があった。
大林組が今回開発した3Dプリンタは、7軸のロボットアームを活用。アームの先端にはセメント系材料を吐出するノズルが付いている。ノズル動作の制御は、事前にオフラインティーチング(動作教示)を行う。これにより、ノズルが一定の速度で所定の経路を正確に移動することで、正確に積層造形を行えるようにした。
インクにはデンカ(東京都中央区)が開発した、特殊なセメント系材料を利用している。圧力をかけた状態では流動性があり、圧力から解放されると粘性が生じてその後固くなり、形状を維持する「チキソトロピー性」という特性を持つのが特徴の材料だ。建築物や土木構造物に必要な強度と耐久性を持ち、吐出直後でも形状が崩れることなく維持されるため、型枠を使わずに部材を製造可能という。
実際にこの3Dプリンタを使い、中空のある幅500×奥行250×高さ500mmの中空のモルタルブロックを複製製造する実験を行った。その結果、モルタルブロック1つを約15分で製造できたという。さらに、このモルタルブロックを組み合わせた、アーチ状のブリッジを製作することに成功した。
大林組では今後、次世代技術の1つとして、建設分野における3Dプリンタを活用に向けた研究開発を進めていく方針だ。具体的には、さまざまなデザインに対応して積層造形を行える3Dプリンタの特徴を生かし、生物の構造を模倣する「バイオミメティクス」による、軽くて強い骨のような構造物や、荷重条件に対し、最適な形態を解析する形態最適化の手法を取り入れた構造物製造への応用を検討。将来の実用化を目指すとしている。
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