隈研吾建築都市設計事務所、HPの3Dプリンタでファブリックのオブジェ製作(1/2 ページ)
DMM.makeは、日本HP初の3Dプリンタ「HP Jet Fusion 3D」のサポートサービスを開始する。2018年4月25日に行われたビジネスユーザー向け説明会では、3Dプリンタの可能性を示唆する講演もあり、隈研吾建築都市設計事務所でのオブジェのパーツ製作が事例として紹介された。
日本HPは2018年4月25日、DMM.com(以下、DMM)とリコージャパンの3社共同で新たに展開する3Dプリントサービス「マスプロダクションサポートサービス」の説明および展示会をDMMの本社で開催した。
3Dプリンタの提供をHP、販売はリコー、DMM.makeがユーザーサポート
新サービスは、HPが開発しリコージャパンが販売する業務用3Dプリンタ「HP Jet Fusion 3D」を対象に、DMM内のDMM.make 3D PRINTがビジネスユーザー向けに出力から販売までサポートを行う。DMM.make 3D PRINTは、3Dプリンタによるモノづくり経験者と初心者がクロスして、「つくって・売って・買える」のプラットフォーム構築を目指している部門。
3社の提携理由をDMM.makeは、世界市場と未来に向け、3Dプリントのサービスではグローバル市場で圧倒的な後発で、この立ち位置からの脱却を目指すためと説明した。
DMM.make 3D PRINTが提供するマスプロダクションサポートサービスは、性能確認・検証、3Dプリントサービスとしての利用、装置の購入希望者へのフォローアップ、購入後のバックアップの4つが含まれる。3Dプリンタは、装置を保有せずに3D出力サービスとして利用することもできるが、希望者には、ユーザー同意の上3社でナレッジ共有を行い、リスクを大幅に低減させた形での導入も可能だという。
説明会後半は、建築やアートの世界で、クリエイターが3Dプリンタをどう活用しているか、市場としては若干落ち着いた感のある3Dプリンタの今後の可能性がうかがえる製作事例が紹介された。
「隈研吾建築都市設計事務所」の3Dプリンタ導入事例
建築用途では、新国立競技場の整備計画を手掛けた隈研吾建築都市設計事務所の村井庄一氏が登壇。同事務所は、木(もく)や新素材を積極的に取り入れており、その設計思想には、「建築を通して社会問題の解決を目指す」ことが根底にある。
2018年4月17〜22日にイタリアで開催された「ミラノ・デザイン・ウィーク」では、テーマが「世界的な環境問題をデザインで解決する」だったため、事務所の設計思想とマッチしたという。そこで製造業向けなど3DCADを開発している仏 ダッソー・システムズとコラボし、大気汚染の浄化機能を持つファブリック(布素材)を用いて、同社のパビリオンに展示するインスタレーションを製作した。
製作にあたっては、ファブリックに強度がないこと、コンセプトとして少ない体積で広い面積を確保しなければならないという2つの課題があった。思案の末、布を折り曲げて強度を高め、表面積も広げられる「プリーツ」という手法を採用。HPの水性大判プリンタ「DesignJet」で紙にプリントして、1分の1スケール実物大の試作品を作った。
試作から実作への過程で3Dモデル化した結果、実際には上から吊(つ)っているワイヤと各部をつなぐ、形状がバラバラな40種類の接合部品が必要なことが判明した。DMM.makeに相談したところ、HPの3Dプリンタでジョイントパーツを出力することになった。
村井氏は、「3Dプリントのメリットは、10日ほどでイメージそのままの精度で出てくるため、修正なしで即現場に持っていけるという納期短縮につながったこと。また、デザインメソッドをアーカイブして、自分たちの経験として蓄積できたことも大きかった。今回デジタルソリューションをしていく上で、HPやDMMなど、多くの方々にプロジェクトにジョインしてもらえ、“開かれたデザイン”ができたことも収穫だった」と語った。
次にアート系の事例紹介では、デザイナーの後藤映則氏が登場した。
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