実海域実験場提供システムを用いて港湾構造物に海藻を着生、東亜建設工業:カーボンニュートラル
東亜建設工業は、ブルーカーボン生態系の拡大に向けて直立の護岸など港湾構造物への海藻着生に関する技術検討を進め、実海域実験を推進している。今後は、海藻の生育状況と着生基盤への生物の着生状況を引き続きモニタリングしていく。さらに、多様な海藻がより効果的・効率的に着生・生育しやすい形状や方策を検討するとともに、カーボンニュートラルポートの形成に資する技術として全国の港湾への展開も見込んでいる。
東亜建設工業は、ブルーカーボン生態系の拡大に向けて直立の護岸など港湾構造物への海藻着生に関する技術検討を進め、実海域実験を行っていることを2022年6月13日に発表した。
実験基盤での海藻着生の有効性を確認
国土交通省港湾局では、脱炭素社会の実現に向け、物流や人流の拠点となる港湾で、カーボンニュートラルポートの形成に関する検討を進めており、港湾・沿岸域におけるブルーカーボン生態系を拡大させる取り組みを推進中だ。
一方、東亜建設工業では、ブルーカーボンに関する技術の1つとして、直立港湾構造物に海藻を繁茂させ、CO2吸収機能を持たせる技術を検討している。そこで、関東地方整備局の実海域実験場提供システムを活用し、横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物に海藻の着生と生育を促す着生基盤を設置してその効果を検証中だ。
検証では、東亜建設工業が考案した海藻の着生や生育を促す角部を有する突起形状の着生基盤(実験基盤)と、比較のために直立構造を模した平板形状の着生基盤(対照基盤)を用いた。加えて、2021年2月には、横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物にこれらの着生基盤を設置し、設置約1年後に海藻の着生状況を確かめた。
実験基盤では、突起形状の角部を起点として海藻であるアオサ属など緑藻類の着生が認められた。一方で、対照基盤では、緑藻類の着生がほとんど認められず、実験基盤での海藻着生の有効性が確認された。
このことから、直立構造物に対して角部を有する着生基盤の設置による形状の変化を与えることで、海藻の着生を促し、CO2吸収源となるブルーカーボン生態系の形成につながることが分かった。
加えて、海藻が生育することで生物の餌や住処の提供につながり、東亜建設工業が考案した形状の基盤は海藻によるCO2吸収機能だけでなく、生物多様性を維持する生態系の構築や栄養塩吸収による水質浄化などにも役立つことが期待できる。
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