戸田建設が電気検層を用いて地盤改良効果を見える化する評価手法を開発:施工
戸田建設は、岐阜大学 工学部の八嶋厚特任教授や地盤防災ネットワーク、太洋基礎工業とともに、薬液注入工法の地盤改良効果を確かめるために、小型動的コーン貫入試験と電気検層を併用した評価手法「ジオレジスタ法」を開発した。ジオレジスタ法は、1度の削孔で2つの試験を効率良く行え、それぞれの試験結果が補完し合うことで、従来手法では評価が難しい地盤条件であっても地盤改良効果の適正な評価を実施できる。
戸田建設は、岐阜大学 工学部の八嶋厚特任教授や地盤防災ネットワーク、太洋基礎工業とともに、薬液注入工法の地盤改良効果を調べるために、小型動的コーン貫入試験と電気検層※1を併用した新たな評価手法「ジオレジスタ法」を開発したことを2022年6月22日に発表した。
※1 電気検層:ボーリング孔内に電極プローブを下げ、周りの地盤の電気比抵抗を測定する技術。
地盤性状のばらつきが大きい埋立地盤でも地盤改良効果を見える化
薬液注入工法は、掘削工事などの仮設的な補助工法(地盤止水、強度増加)として用いられてきたが、近年は液状化対策を目的とした恒久型薬液(特殊シリカ液)を使用した本設の地盤改良にも広く適用されている。
一方、これまで目では見えない薬液注入工法の地盤改良効果は、改良地盤から採取した試料を用いた一軸圧縮試験によって、一軸圧縮強さが設計強度以上であることを指標として確認する。
しかし、改良土に求められる強度は設計基準強度quck=50〜100kPa程度と小さいため、実際には試料採取時に生じる乱れの影響を受けやすく、原位置の改良強度を正しく評価することが難しいという課題があった。
そこで、戸田建設は、改良前後における地盤で生じる電気比抵抗の変化に着目し、電気検層を併用したジオレジスタ法の開発に着手した。
ジオレジスタ法は、小型動的コーン貫入試験と電気検層を併用した原位置試験※2。作業手順は、まず先端コーン上部に電極プローブを装着して、小型動的コーン貫入試験を所定深度まで実施する。次に貫入ロッド引き抜き時に電極プローブを孔壁に接触させ電気比抵抗を連続的に測定(電気検層)。
※2 原位置試験:地盤特性を得るために、その位置の地表あるいは地中(ボーリング孔内)で直接行う試験。
続いて、小型動的コーンから得られるNd値※3と電気検層から得られる電気比抵抗R(Ω-m)※4の改良前後で発生する変化により改良効果を判定する。なお、電気比抵抗の測定に用いる電極プローブには、電極接触不良の影響が少ない点電極(電極配置:4極、電極間隔:25ミリ)を採用している。
※3 Nd値:質量300ニュートンのハンマーを20センチの高さから自由落下させコーンを10センチ貫入させるのに要する打撃回数。
※4 気比抵抗R(Ω-m):電気の流れにくさを表す抵抗値で薬液や粘土・塩水を含む砂は低い数値を示す。
利点は、Nd値と電気比抵抗の改良前後で生じる変化により従来手法よりも改良範囲を明確に捉えられる他、動的コーンから得られる改良前後におけるNd値の増加分(ΔNd値)と一軸圧縮強さ「qu」には相関関係が示されており、原位置での地盤の強度評価が可能な点。
さらに、改良前後におけるΔNd値の差異が明確に捉えられない場合でも、電気比抵抗のRから改良体の一軸圧縮強さquの推定が行えるだけでなく、従来実施していた試料採取による一軸圧縮試験に比べて地盤性状のばらつきによる影響が少なく、原位置の改良効果を適正に評価できる。
戸田建設では、沿岸部プラント施設の液状化対策工事を目的とした薬液注入地盤の事後調査に、ジオレジスタ法を初めて適用した。
具体的には、対象地盤は地盤性状のばらつきが大きい埋立地盤で、改良範囲(GL-2〜8メートル)に粘土層および細粒分含有率が40%を超える層が介在し、貝殻なども多く混入していたため従来の試料採取による一軸圧縮試験では評価が困難だったが、ジオレジスタ法により、改良範囲と強度について適正な評価を行えた。
また、これまで電気検層は地下水に塩分を含む沿岸部埋立地盤では、地下水の電気比抵抗が小さく適用は不向きとされていたが、新たに開発した電極プローブにより、ジオレジスタ法であれば地下水塩分濃度が5000〜1万ppm程度以下の条件であれば、判別が可能であることが判明した。
今後は、新手法の早期実用化を図り、液状化対策をはじめとした地盤改良工事における高い品質と安全性の確保を目指す。
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