“スマートビル”の先に見据える持続可能な街づくり 日立×東京建物の協創戦略:Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN(3/4 ページ)
コロナ禍への対応、SDGsへの関心、生産年齢の人口減――街(都市)を取り巻く環境は刻々と変化している。そうした現状では、竣工時に魅力のピークが到達する従来型の街づくりからの脱却が求められている。街が持続的に魅力的であり続けるために必要なこととは何か。ビルのソリューションプロバイダーとして業界をリードする日立のビルシステムビジネスユニットと、持続可能な街づくりを通してESG経営の高度化を推進する東京建物が展望を語った。
イノベーションエコシステムの拠点づくり
東京建物は、イノベーションエコシステムを5つのカテゴリーで照準を定め、八日京エリアで拠点づくりを進めている。5つのカテゴリーとは、「サステナビリティ」「既存産業×テック」「ものづくり」「食」「アート」。
このうち、サステナビリティと既存産業×テックは、同エリアに大企業が集中することを考慮して、企業共通の経営課題(マルチカテゴリー)として設定。サステナビリティの拠点施設は、京橋の東京スクエアガーデン6階にある「City Lab TOKYO(シティーラボ東京)」。持続可能な都市形成のテーマで、多くのメンターやパートナーがともに考え実行する場所として、各種イベントやプログラム、講座などを開催しながら、都市への実装を目標としている。
なかでも、イノベーションには、最初のきっかけとなる新しい“シーズ(Seeds:種)”が不可欠との考えから、持続可能なビジネスに軸を置くスタートアップ企業に向けたオープンイベント「CityLab Ventures(シティーラボベンチャーズ)」を開催。およそ2年半で、400以上のサステナビリティ関連イベントを開き、計2万人以上が来場した。
また、既存産業×テックに対しては、東京駅八重洲口の東京建物本社内に、スタートアップの支援施設「xBridge-Tokyo(クロスブリッジトウキョウ)」を設置した。東京駅前には多くの大企業が集まるが、東京東部に拠点を構えるスタートアップは多くない。そこで、大企業とスタートアップの交流スペースとして設けたのがxBridge-Tokyoだ。
開設から約2年間の第1ステージでは、30社、約200人が拠点利用。2020年6月にスタートした第2ステージでは、ベンチャーキャピタルのXTech Venturesも参加している。新たに、東京メトロ 銀座線「京橋」駅近くに、内装什器付き個室オフィス「xBridge-Tokyo Next(クロスブリッジトウキョウネクスト)」もオープンし、成長過程にあるベンチャー企業をサポートしている。
残りの3テーマのものづくり、食、アートは、地域特性をもとにした分野別カテゴリーという位置付け。ものづくりでは、xBridge-Tokyo Nextビル内に設けた「TOKYO IDEA EXCHANGE(トウキョウアイデアエクスチェンジ)」に、レーザーカッターや3Dプリンタなどを用意し、エンジニアが集い、相互交流することで、先端的なものづくりの場となることが期待されている。
また、食に関しては、京橋に位置する「TOKYO FOOD LAB(トウキョウフードラボ)」が担う。2階建ての1階には、人工光型植物工場に特化したサービスを展開するスタートアップ企業のプランテックスが入居し、屋内型植物工場の研究を進めている。2階には、「U(ユー)」と名付けたプロのシェフや食の研究家によるオープンイノベーションの空間となっている。
TOKYO FOOD LABから少し離れた場所には、食のコンテンツを通じたコミュニケーション創出を促すシェアキッチン「KITCHEN STUDIO SUIBA(キッチンスジタオスイバ)」を運営している。
最後のアートは、2021年10月に東京建物京橋ビル1階に開業した「BAG(バッグ)」がそのシンボル施設となる。BAGは、Brillia Art Gallery(ブリリアアートギャラリー)の略称で、東京建物の住宅事業ブランド「Brillra」が展開するアートギャラリー。Brilliaでは、これまでにも、新築マンションの共用スペースを使って、アート作品の設置や公募展「Brillia Art Award(ブリリアアートアワード)」など、アートに関するさまざまなプロジェクトを実施してきた。
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