“スマートビル”の先に見据える持続可能な街づくり 日立×東京建物の協創戦略:Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN(2/4 ページ)
コロナ禍への対応、SDGsへの関心、生産年齢の人口減――街(都市)を取り巻く環境は刻々と変化している。そうした現状では、竣工時に魅力のピークが到達する従来型の街づくりからの脱却が求められている。街が持続的に魅力的であり続けるために必要なこととは何か。ビルのソリューションプロバイダーとして業界をリードする日立のビルシステムビジネスユニットと、持続可能な街づくりを通してESG経営の高度化を推進する東京建物が展望を語った。
「BuilPass」によってもたらされるビルの付加価値
もう1つは、就業者ソリューション「BuilPass(ビルパス)」。テナントエクスペリエンスアプリの開発を手掛けるアイルランドのベンチャーSpaceOSと共同開発したスマートフォンアプリで、一人一人の属性に沿った柔軟なサービスを提供する。ID管理機能を使って就業者の属性情報を統合的に管理するので、複数のビルをまたいだサービスも可能だ。
BuilPassの提供価値は、就業者の新たな体験、オフィスをまたがって利用できるサービス提供、イノベーション・交流の推進などにあり、テナントに選ばれ続けるビルオーナーのオフィスづくりを支援する。
次世代の街づくりのカギは“協創”
IT、OT、プロダクトの総合力を生かし、ビルのソリューションプロバイダーとして、クライアントとともにスマートビルの実現を推し進める日立。渡辺氏は、「今後アプリケーションを充実させることで、SDGs、ESG経営などにも貢献できる」と自信を口にした。
一方で、次世代の街づくりのカギは、「スマートビル、エリア、プレイヤーなど、多数のステークホルダーの連携にある」とも分析。その一環で、日立は2021年4月に、社会課題の解決に向けて、ステークホルダーが知見・技術・アイデアを共有し、オープンイノベーションを加速する拠点として、「東京」駅直結のサピアタワー17階に「Lumada Innovation Hub Tokyo(ルマーダイノベーションハブトウキョウ)」を開設した。この場を通して、さまざまなユーザーやパートナーとコラボレーションを図り、イノベーションを加速させていくとの展望を語った。
最後に渡辺氏は、協創のパートナーとなる東京建物に、「持続可能な未来を見据えた次世代デベロッパーになるべく、コラボレーションしていければ」と語りかけ、講演を結んだ。
歴史と地域特性を生かし、街の持続的な発展を目指す東京建物
続いて、東京建物の冨谷氏が、社会課題解決型の街づくりのテーマで講演。東京建物がJR東京駅と銀座、日本橋室町、首都高速都心環状線に囲まれた八重洲、日本橋、京橋エリア(=八日京エリア)で進める開発事例を中心に、東京建物の事業戦略を語った。
東京建物はオフィスビルや、住宅事業「Brillia(ブリリア)」を展開する総合不動産会社。これまで数々の環境性能の高いビルを開発してきた東京建物が、次に見据えるのは、「社会課題を解決する街づくり」だと、冨谷氏は話す。
現在、東京建物は、他のデベロッパー案件も含め、複数の大規模再開発が進む八日京エリアを最重点地区と捉えている。プロジェクトで大切にしていることは、「街の持つ歴史的な資産や歴史的な文脈を活用することだ」という。
京橋はかつて“竹河岸”と呼ばれ、江戸城に物資を収める供給拠点として発展した地域。全国からものづくり職人が集まり、それが現在、製造業の本社が集中している「ビジネス文脈」につながっている。
他にもこの地域には、絵師の歌川広重や狩野一派の拠点があった「アート文脈」に加えて、日本橋と江戸橋の間の日本橋川沿いの「魚河岸」(魚市場)、京橋が架かっていた京橋川沿いの「大根河岸」(青物市場)といった食の供給拠点としての「食の文脈」などの側面もある。
冨谷氏は、「ビジネス集積地という地域特性と、歴史的文脈を大切にしながら、八日京エリアがイノベーティブな地区として持続的に発展するために、イノベーションを誘発するためのシステム“イノベーションエコシステム”の形成を支援していきたい」と語った。
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