“スマートビル”の先に見据える持続可能な街づくり 日立×東京建物の協創戦略:Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN(1/4 ページ)
コロナ禍への対応、SDGsへの関心、生産年齢の人口減――街(都市)を取り巻く環境は刻々と変化している。そうした現状では、竣工時に魅力のピークが到達する従来型の街づくりからの脱却が求められている。街が持続的に魅力的であり続けるために必要なこととは何か。ビルのソリューションプロバイダーとして業界をリードする日立のビルシステムビジネスユニットと、持続可能な街づくりを通してESG経営の高度化を推進する東京建物が展望を語った。
日立グループは、「Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN」(2021年10月11〜15日)」をオンラインで開催した。会期中には、日立の描くビジョンや、OT(Operational Technology)とIT(Information Technology)、プロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業の成果やIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を活用した新たなソリューションなど、ユーザーの経営課題や社会課題を解決に導く、さまざまな取り組みを紹介した。
このうち、エキスパートセッション「東京建物が実践する『社会課題解決型のまちづくり』」では、日立製作所 ビルシステムビジネスユニット 日本事業統括本部 SIB推進本部 DX推進営業部部長 渡辺裕之氏と、東京建物 まちづくり推進部 都市政策室 シティラボ東京 ファウンダー/ゼネラル・マネジャー 冨谷正明氏が登壇。渡辺氏、冨谷氏の順に講演し、最後に両者の考えをさらに深めるためのディスカッションの場が設けられた。
日立が考える“これからのビル”とは
渡辺氏の講演タイトルは「日立のスマートビルへの取り組み〜変化の時代に対応するスマートビルの在り方〜」。日立と日立ビルシステムの考えるスマートビルとその実現に向けた具体的な試み、そして街づくりで提供できる新たな価値について解説した。
冒頭、渡辺氏は、不動産業界を取り巻く環境が変化しつつあるとの認識を示した。「コロナ禍による働き方や生活の在り方の変化、国際的な都市間競争の激化、国内総人口と生産年齢人口の減少、加えてカーボンニュートラルなどSDGs重視の価値観への対応」などがその背景にあるという。
不動産デベロッパーについては、「立地や規模などのハードウェアだけではなく、これからはソフトウェアでも、予期せぬ変化に対応することは避けては通れない」と指摘。「経営効率、カスタマーエクスペリエンスが向上する施策を打ち続けるためには、デジタル技術を活用して、進化し続けることが大切。車や家電と同様に、ビルもソフトウェアの力で、社会課題への対応やエリア価値の向上を達成できる」との持論を展開した。
渡辺氏が思い描く“これらからのビル”とは、「ビル設備から取得するデータと、集積したデータを加工/分析するプラットフォーム、そしてデータ活用や掛け合わせで解決策を提供できるアプリケーションの3つから成り、設備と人の両面に役立つ価値へと変換する」“スマートビル”だ。ビルのスマート化は、単体で完結するのではなく、他のビルとネットワークを形成し、価値の範囲を拡大することで、エリア単位でのウェルビーイングの実現、エコシステムの形成、カーボンニュートラルへの対応などにもつながることが期待されている。
日立が提供する2つのスマートビルソリューション
渡辺氏が挙げた、スマートビルに必要な3要素、すなわち「活用するデータソースの取得」「プラットフォーム構築によるデータ利活用の推進」「進化し続けるアプリケーションの提供」を可能にするのが、日立のスマートビルソリューションとなる。
日立が提供するスマートビルソリューションは2つある。1つは、ビルIoTソリューション「BuilMirai(ビルミライ)」。昇降機や空調設備など、ビル設備の稼働状況を遠隔で統合的に監視するデベロッパー向けのサービスだ。
BuilMiraiは、複数のビルを横断的に監視し、設備データを分析するだけでなく、ビル内のエリアごとの人流データを組み合わせれば、混雑度なども可視化できる。BuilMiraiがゲートウェイのような役割を担い、ビルに関するさまざまなデータを統合・管理することで、ビルメンテナンスの効率化や快適に過ごせる空間の提供、運営品質の維持など、不動産にこれまでになかった付加価値を付与することが可能になる。
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