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【第7回】建設業も「我関せず」ではいられない“SDGs”の潮流にどう向き合うか?建設専門コンサルが説く「これからの市場で生き抜く術」(7)(2/2 ページ)

本連載では、タナベ経営の建設専門コンサルタントが各回テーマを設定してリレー形式で解説していく。第7回は、世界的なトレンドが巻き起こっているSDGsに対して、建設業界でもどう対峙していくべきかを、「SDGsビジネスモデル」という理想像を設定し、建設会社の事例も示しながら説いていく。

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4.A社のSDGsの取り組み事例

 S県にある地域密着型のA社は、注文住宅や土地の有効活用を展開している建設会社で、年商は約70億円、業歴は約50年。A社は長期的な視座に立って地域社会に対する貢献と自社の成長をプランニングすべく、中期経営計画にSDGsを盛り込ませるために以下の取り組みを行った。

 (1)自社がSDGsに取り組む意義・目的をSDGs宣言として明確にする

 (2)SDGsのゴール・ターゲットと中期経営計画の各項目を掛け合わせ、実施すべき項目を大枠で捉え、ロングリストとして作成

 (3)ロングリストから類似課題を統合し、環境・社会・経済で分類したショートリストを作成

 (4)自社顧客への提供価値、提供価値を持続するための経営基盤、地域環境への貢献、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメントの観点でのマテリアリティー(経営の重要課題)を特定

 (5)各マテリアリティーを経済性と社会性の観点でマトリクス化し、自社とステークホルダーにとっての重要テーマを絞り込む

 (6)重要テーマごとに実施する項目とKPIを策定

 (7)実施事項をアクションプランに落とし込む

 (8)ステークホルダーとのパートナーシップを検討

 (9)SDGs推進委員会・組織横断プロジェクト等の推進体制を検討する

 (10)部門レベルへ目標を細分化し落とし込む

 (11)コミュニケーションツールとルールを作成


図3 A社が目指したSDGsの取り組み水準

 同社は中期経営計画にSDGsを盛り込み、まさにこれからSDGsの考え方をベースとした経営を進めていく段階にある。余談ではあるが、社内ではSDGsへの取り組みを加速させるための社員教育や中期経営計画の進捗確認など、確実に実行をしていくための後工程もしっかりと計画に盛り込んでいる。

5.最後に

 SDGsは、大企業を中心に取り組みが進んでいる。言い換えるなら、建設業界のサプライチェーン全体の変化を意味する。今後、消費者意識にまで影響が及べば、エシカル消費も増加してくるだろう。SDGsのゴール目標は2030年。今から取り組みをしても十分間に合うはずだ。ぜひ、読者の企業でも取り組みに着手してもらいサステナブルな経営を実現してもらいたい。

※エシカル消費:消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと

著者Profile

石丸 隆太/Ryuta Ishimaru

2021年より建設ソリューション研究会リーダーに就任。2022年より現職。クライアントの成長に向け、将来のマーケットシナリオ変化を踏まえたビジョン・中期経営計画・事業戦略の構築で、「今後の成長の道筋を作る」ことを得意とする。現場においては「決めた事をやり切る」じりつ(自立/自律)した強い企業ならびに社員づくりを推進し、クライアントの成長支援を数多く手掛けている。

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