【第7回】建設業も「我関せず」ではいられない“SDGs”の潮流にどう向き合うか?:建設専門コンサルが説く「これからの市場で生き抜く術」(7)(1/2 ページ)
本連載では、タナベ経営の建設専門コンサルタントが各回テーマを設定してリレー形式で解説していく。第7回は、世界的なトレンドが巻き起こっているSDGsに対して、建設業界でもどう対峙していくべきかを、「SDGsビジネスモデル」という理想像を設定し、建設会社の事例も示しながら説いていく。
1.もはや、大企業だけのテーマだけではでなくなった“SDGs”
近年は、国内の企業でも、経済的な利益追求以外の「社会性」といった視点での取り組みに関心が集まり、社会的なインパクトや課題解決、新たな価値の創出が求められてきている。そうしたなかで、企業が持続可能な経営を行うためには、自社のビジネスモデルに社会課題の解決要素を加味した戦略が欠かせない。なぜなら、「本業にイノベーションを起こし、進化させることが社会課題の解決につながる」というサイクルを起こすことが、SDGs(持続可能な開発目標)のあるべき姿だからだ。
“経済性”だけでなく“社会性”も両立させたSDGs経営を実現するには、自社の本業にSDGsを掛け合わせた戦略の構築と、重点取り組みテーマ=KPIを明確に設定し、実行する実装計画が必要となる。
SDGsが目標年と定める2030年のゴールに向け、全ての企業がSDGsに取り組まなければ、それ自体が社会リスクと成りかねない。各企業内でも、全社員を巻き込み誰一人として抜け落ちる者がいない精神で、“社会性”と“経済性”を両輪で回す、真のSDGs経営を目指さねば、時代の流れに取り残された企業となってしまう。
★連載バックナンバー:
本連載では、経営コンサルタント業界のパイオニア・タナベ経営が開催している建設業向け研究会「建設ソリューション成長戦略研究会」を担う建設専門コンサルタントが、業界が抱える諸問題の突破口となる経営戦略や社内改革などについて、各回テーマを設定してリレー形式で解説していく。
2.SDGsのビジネスモデル
社会性と経済性の2つの軸で、SDGsへ向き合う姿勢を4つのビジネスモデルで大別したのが下図となる。
(1)持続不可能モデル:
市場における企業の存在価値は低く、加えて収益性も低いため、持続性は最も低い。社会性・経済性の両面で価値を発揮できず市場から退場するビジネスモデルである。
(2)慈善事業的モデル:
企業のCSR活動やNPO法人のように社会性は高く評価されるが、大きな収益を生まないため、企業として持続性を実現し得ないビジネスモデルである。
(3)短期的視点経営モデル:
経済的メリットを強調しすぎるため、本来託されている社会的責任を十分に果たされなくなるという問題があるビジネスモデル。社会性・経済性を追求していく企業が増えていく中で時代に取り残され、長期的にみれば衰退していく。
(4)SDGsビジネスモデル:
本業と結び付けて、社会的責任を果たすという「社会性と経済性の両立」を実現するモデル。企業の持続的成長を実現する“SDGsビジネスモデル”である。
これからの持続的な成長とは、資本主義に代表されるような短期的な利益を追求していくビジネスモデルではなく、社会や環境と適合しながら、利益を追求していく時代に突入したといってもよい。今後、顧客に選ばれる企業は、SDGsに代表されるような項目を達成できているかが選定基準となってくる。
3.SDGsビジネスモデルを構築するステップ
SDGsの場合、17の目標と169のターゲットが設定されているため、幅広いテーマを理解して、自社に関連する目標についてターゲットを見据えながら理解することが必要となる。
そのため、書籍やセミナーへの参加など、まずはインプットをするところから始まり、その上で、自社にどのような課題があるのか、その課題を解決することでSDGsのどの目標を達成できるのかを明確にし、戦略に適合した取り組み方針を策定する。ゴールが壮大なので、一人だけで解決することは不可能なことから、社員の共通意識を持たせることが重要となってくる。
次のセンテンスでは、SDGsに取り組んだ建設業の例をもとに、SDGsビジネスモデルには何が必要なのかを分析してみたい。
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