渋滞防止に貢献する工事車両管理支援システムを開発、大林組:現場管理
大林組は、渋滞の防止や現場作業の円滑化に貢献する工事車両管理支援システム「FUTRAL」を開発した。加えて、2021年10〜12月に大阪府此花区夢洲内にある2つの建設現場で工事車両の入退場予定や通行ルートの確認を行い、工事車両管理におけるFUTRALの有用性を実証した。
大林組は、大規模開発プロジェクトで、工事車両の建設現場への入退場予定や走行記録を可視化し、渋滞の防止や現場作業の円滑化に貢献する工事車両管理支援システム「FUTRAL」を開発したことを2022年6月6日に発表した。
入退場予定や交通情報、工事車両の位置、走行記録をダッシュボードで可視化
建設現場では、資機材を運ぶ多量の工事車両が毎日入退場する。とくに大規模開発プロジェクトでは、1日当たり数千台の車両が通行し、周辺道路の渋滞につながるだけでなく、近隣の通行禁止エリアを誤って走行するなど、周辺環境に悪影響を及ぼすことがある。
そのため、工事管理者は、特定の時間に工事車両の入退場が偏らないように調整し、通行ルートの順守を徹底するように指導するが、大規模開発プロジェクトでは、区域内に複数の建設現場が近接して稼働しているため、現場間での調整が必要となり、時間と手間がかかる。一方、通行禁止エリアを通行した工事車両がどの建設現場に所属するかを確認することも困難だった。
そこで、大林組は、複数ある建設現場の入退場予定や交通情報、工事車両の位置、走行記録などをダッシュボードで一元的に確かめられる工事車両管理支援システムのFUTRALを開発した。
FUTRALは、市販のシステムを用いて、工事車両の入退場予約、位置や移動状況の把握、メッセージの送受信といったデータをダッシュボード上で集約・加工することで、工事車両管理に必要な情報を表示する。
工事管理者は、FUTRALを通じて複数現場の入退場予定をチェックしながら、通行ルートごとに渋滞発生を回避するための調整や指示が可能な他、複数の施工会社で1つのプロジェクトを管理する場合は、入退場予定に関するデータを、各社のシステムから必要な項目を出力することで連携できる。
具体的には、交通量調査や交通分析を基に、通行ルートにおける一般車両の交通量と渋滞警戒ライン(上限台数)をあらかじめFUTRALに設定する。そこに、予約システムを介して、翌日以降における入退場予定の時間と台数を入力することで、ダッシュボードに時間単位で交通量予測を積み上げ表示される。
さらに、工事管理者は時間帯ごとに渋滞警戒ラインを超えているかを一目で調べられ、関係者と交通量を調整することで、通行ルートの渋滞を予防する。
今回のシステムでは、現場周辺道路の交通情報をリアルタイムでダッシュボードに表示し、ドライバーや工事管理者はメッセージを送受信するため、工事管理者は交通情報を参照しながら、通行ルートの変更などを臨機応変に指示する。加えて、周辺に工事車両の一時待機場所を設置する場合には、建設現場内の混雑状況を勘案して待機指示を出すといった対応を図れる。
また、スマートフォンのGNSS情報に基づく位置情報をチェックするため、あらかじめ通行禁止エリアを指定しておくことで、通行禁止エリアへの侵入を自動的に検知して、運行履歴を記録するとともにドライバーにメッセージを送信する。
これにより、予定時間を大幅に逸脱する工事車両の入場や誤った通行ルートへの侵入をすぐに是正指導するため、周辺環境の保全にも寄与する。建設現場で資機材の到着を待つ作業員にとっても、工事車両の遅延状況を見える化するため、タイムリーな荷受けを実現し、現場作業の円滑化に役立つ。
今後は、大規模開発プロジェクトで工事車両を適切にコントロールすることで、周辺環境の保全や建設現場の生産性向上を目指すだけでなく、FUTRALにより蓄積した交通データを分析することで、渋滞予測や交通制御の仕組みを構築し、建設の先にあるスマートシティーの運営まで一貫して生かせるように、関係者との連携・協力を進める。
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