工事現場の車両入出管理を実現するETCを活用したシステム、古野電気:建設業におけるIoT・AI活用セミナー(1/2 ページ)
古野電気は、現場の安全性向上を目的に、ETCを活用した車両入出管理のシステムを開発し、建設業界への普及活動を強めている。
古野電気とフルノシステムズは2019年5月21日、東京都台東区の浅草橋ヒューリックカンファレンスセンターで「建設業におけるIoT・AI活用セミナー〜車両・人・作業の可視化と現場改善手法について〜」を開催した。
本稿では当日の講演のうち、古野電気システム機器事業部事業管理部企画課の永田靖徳氏の講演「NETIS新技術発表会でNo.1評価獲得!ETCを活用した事故防止システムと簡単IoT事例」をレポートする。
連動した電工掲示板とスピーカーで作業者に注意喚起
古野電気は、1948年に世界初だという魚群探知機の実用化に成功して以来、産業用と舶用電子機器分野で、独自の超音波のテクノロジーや電子技術を基に、さまざまな製品をリリースしてきた企業。近年は、建設向けの機器の開発にも注力している。
交通量が多く、一般車がハイスピードで行き来する車道に隣接する現場へ工事車両を入場させる場合、追突される可能性があるため、安全性を確保するツールが望まれているという。こういった問題を解決するソリューションとして注目されているのが、古野電気が展開するETCを用いた事故防止システム。
システムは、ETCカード不要で、事前に登録した工事車両のETC車載機番号を検知する「DSRC路側アンテナ」や後続車に減速を知らせる電光掲示板、誘導員と歩行者に工事車両の接近を通知する回転灯とスピーカー、ETC車載器で構成される。
永田氏は、「工事車両に搭載したETC車載機のIDをDSRC路側アンテナに登録することで、アンテナの下を通過すると、電光掲示板が反応し、減速注意のようなメッセージを表示できる。同時に、回転灯やスピーカーと連携し、音と光で作業者や歩行者に注意喚起を図れる」と説明。
ETCをシステムに利用している理由については、「1つは、普及率の高さと端末の回収が不要なこと。国土交通省の資料によれば、2018年の時点で、高速道路を利用する車の91.9%が、ETCを搭載している。首都高では、全車の95.9%を占めている。これまで使用されていたGPSロケーターのように、使用後に集める手間もいらないため、イニシャルコストを抑えられる。2つ目が、通信の特徴として、認識率が高く混線しにくいこと。3つ目が、国もETCの使用を推奨していることで、今後ますます、ETCを使いやすい環境が整備され、利便性が向上していくと見込んでいる」と続けた。
奥多摩にある山岳のトンネル工事での活用事例も紹介された。DSRC路側アンテナにより、工事車両が指定のエリアの前後に近づくと、電光掲示板が、「工事車両接近中」と点滅することで、歩行者の安全性の向上につながったという。
この他、夜間や雨天といった視界不良時には、一般車の現場への誤誘導を防ぐことにも貢献する。
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