固化材を添加・混合した固化改良地盤の強度を原位置で測れる装置を開発、大成建設:導入事例
大成建設は、軟弱地盤にセメントなどの固化材を添加・混合した固化改良地盤の強度を原位置で直接測定する「T-GeoPenester」を開発した。T-GeoPenesterは、原位置地盤に設けた孔内を深度方向と円周方向に自動で移動し、地盤強度を推定する針貫入試験を行うことで、容易に多点の実測強度分布データを取得する。さらに、T-GeoPenesterを適用することで、早期に地盤強度を把握でき、固化改良地盤の性能評価を向上させ、施工の手戻りで生じるリスクの低減が図れる。
大成建設は、軟弱地盤にセメントなどの固化材を添加・混合した固化改良地盤の強度を原位置で直接測定する「T-GeoPenester」を開発したことを2022年5月30日に発表した。
1メートル当たり50点の強度分布データを約1時間半で取得
エネルギー関連施設や上水道・下水処理施設、廃棄物処理施設では、建設に際して、強固な地盤での立地が必要で、対策として地盤改良工事が行われている。このうち地盤に固化材などを添加・混合して強度を高める固化改良工法※1では、これまで改良地盤の性能を評価するために、施工後に原位置でコアボーリング※2を行い、その採取した試料の一軸圧縮試験※3で地盤強度を確認するのが一般的だった。
※1 固化改良工法:軟弱地盤にセメント系や石灰系等の固化材を添加・混合、あるいは薬液を注入して土の性状や強度を改善する工法。
※2 コアボーリング:対象地盤を管状ビットで削孔し、細長いコア状(円柱状)の試料を採取する。
※3 一軸圧縮試験:JIS A 1216で定められる試験方法。自立する円柱供試体を圧縮する試験であり、その最大圧縮応力を一軸圧縮強さとして求める。
しかし、上記の方法はボーリングだけでなく、試料の運搬、切出し、整形などで手間を要し、測定までに最低でも2日間かかり、コアボーリング試料から採取可能な試験体数は、1メートル当たり最大9体程度※4だった。一方、一軸圧縮試験による地盤強度※5は、多くが施工から28日後にチェックするように規定されており、改良地盤の強度不足が判明した場合には、工期への影響は避けられなかった。
※4 アボーリング試料から採取可能な試験体数は1メートル当たり最大9体程度:供試体1体当たりの高さを10センチとした場合の数量。コアボーリング試料から採取可能な供試体の数は、亀裂の有無などコアの状態に大きく依存する。
※5 一軸圧縮試験による地盤強度:固化改良地盤の要求性能は、施工後28日経過時の強度で規定されることが多く、施工から28日後に一軸圧縮試験を行って強度を確認する。
そこで、大成建設は、地盤に設けた孔内で深度方向と円周方向に自動で上下移動・回転し、地盤強度を推定する針貫入試験を行うことで、原位置で多点の実測強度分布データを容易に取得する測定装置のT-GeoPenesterを開発した。
T-GeoPenesterの作業手順では、まず固化改良地盤に設けた孔内に貫入装置を挿入して、所定の測定位置まで自動で移動する。次に、反力装置により貫入装置を測定位置に固定して、孔壁に向けて針の貫入し、引抜きを実施して、地盤強度を測る。
こういった一連の動作を、貫入針を搭載した円柱形貫入装置が自動で繰り返し、1箇所当たり約2分の測定時間で複数の測定位置で地盤強度を迅速に把握する
具体的には、深度方向の測定間隔を2センチとした場合に、1メートル当たり50点の強度分布データを約1時間半で得られ、その詳細な強度分布データにより、精度の高い地盤強度の検証が可能で、従来は安全側の対応として多めに添加・混合されていた固化材量の低減を実現する。さらに、支持力向上や変形抑制などへの活用にも対応し、目的に応じて性能評価の向上を図れる。
加えて、T-GeoPenesterは、同一の孔内と深度で貫入装置を円周に沿ってわずかに回転させることで、何度でも繰り返し地盤強度を測れるため、同じ部分での経時的な強度変化を調べられる。
さらに、施工後約1週間における早期材齢の地盤強度から、28日後の材齢強度を高精度で推定し、地盤強度の確認時期を早めることで、地盤改良における施工の手戻りリスクを減らせる。
今後、大成建設は、T-GeoPenesterをセメントなどの固化材を添加・混合して補強した地盤改良工事に展開することで性能評価技術を高めるとともに、品質管理や施工におけるリスク削減などに活用していく。
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