橋梁の出来形検測システムの完全自動化を実現、三井住友建設:導入事例
三井住友建設は、以前開発した橋梁の出来形検測システム「SMC-スマートメジャー」に向け、3Dレーザースキャナー(計測機)の自動搬送装置を開発し、計測作業から出来形の検測・帳票作成まで、出来形管理業務の完全自動化を実現した。
三井住友建設は、以前開発した橋梁(きょうりょう)の出来形検測システム「SMC-スマートメジャー」に向け、3Dレーザースキャナー(計測機)の自動搬送装置を開発し、SMC-スマートメジャーの機能を強化したことを2022年5月20日に発表した。
従来の計測手法と比較し生産性が3倍に
新たなSMC-スマートメジャーは、計測機によって3次元点群データを取得し、そのデータにより指定した部分の寸法検測・帳票出力までを自動処理するソフトウェアと、開発した計測機自動搬送装置のハードウェアで構成されている。
計測機自動搬送装置は、鉛直方向へ伸縮する鉛直ポストと水平方向へ伸縮・回転する水平ブームから成り、移動作業車前方の横梁に取り付けられる他、この装置により、水平ブーム先端に設置した計測機を任意の箇所に自動で搬送・計測する。
新たなSMC-スマートメジャーの作業手順は、まず、施工管理者が計測開始時刻と計測位置を予約入力すると、計測機が指定時間に自動搬送装置によって任意の指定箇所(複数)に搬送され、点群データを得る。
その後、取得した点群データから出来形寸法を自動検測し、帳票出力まで自動で行う。一連の作業完了時には管理者へ自動でメール通知されるため、出来形管理の完全自動化を実現するとともに、技術者のスキルに依存することなく効率的かつ高精度(検測精度は手動計測と同等レベル)の出来形検測結果を獲得する。
既に、三井住友建設は、新たなSMC-スマートメジャーの試験運用で、施工管理者の延べ労働時間を従来の計測手法と比較した。結果、従来手法では、発注者の検査を実施するための事前計測や帳票作成、検査時の写真記録など、1断面当たりの延べ労働時間が45分であるのに対し、新たなSMC-スマートメジャーでは15分に短縮され、生産性が3倍に向上することを確かめた。加えて、将来的には遠隔での検査も期待される。
今後は、新たに開発した計測機の自動搬送装置を改良するだけでなく、SMC-スマートメジャーを他の構造物や工場プレキャスト製品などに適用拡大することで、省力化と省人化を進めていく。
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