建機のエンジン稼働状況をモニタリングするシステムを開発、西松建設:導入事例
西松建設は、建設機械のエンジン回転数をリアルタイムにモニタリングし、データを蓄積・分析するシステムを開発した。システムは、日々の作業中に、生産性を下げることなく余剰なエンジン稼働(長時間のアイドリングや不必要な高回転稼働)を削減し、建機の省燃費運転を支援することを実現している。
西松建設は、重機のエンジン回転数をリアルタイムにモニタリングし、データを蓄積・分析するシステムを開発したことを2022年5月19日に発表した。
取得したデータは場所や時間を選ばずPCで閲覧可能
同社では、2030年度までにCO2排出量ネットゼロを目標に掲げており、その中の一項目として「建設機械の省燃費運転」を推進している。一方、建設機械の省燃費運転を実現するためには、省エネ型の建設機械を導入するだけでなく、オペレーターが長時間のアイドリングや不必要な高回転稼働をしないような低燃費運転が重要となる。
しかしながら、燃費などの情報が可視化されていない旧式の建設機械では、オペレーターは低燃費運転ができているかをリアルタイムに認識することが困難だった。
そこで、西松建設は、建機からエンジン回転数と位置情報をリアルタイムで取得し、建機のエンジン稼働状況、作業エリアをモニタリングするシステムを開発した。システムは、日々の作業中に、生産性を下げることなく余剰なエンジン稼働(長時間のアイドリングや不必要な高回転稼働)を削減し、建機の省燃費運転を支援する。
具体的には、エンジン回転を検出する「光ファイバーセンサー」と「センサー」からの信号を数値化する「PLC」、データを伝送する「無線中継器(Wi-Fiモデム)」、GPSアンテナで構成される。
こういった装置を後付けするだけでエンジン回転数を検出するため、機種やメーカーに関係なくデータを取得する他、運転席のモニターで燃費などのエコ運転に関する情報を調べられない建機に対しても、システムを取り付けることで、エンジン回転数のデータをリアルタイムで取得させられる。
得られたデータは、クラウド上にアップロードされるため、各建機だけではなく現場全体として管理することが可能となり、データの閲覧に関しても現場事務所や本支社で統括してのコントロールに応じる。
既に、西松建設は、ディーゼルエンジンで稼働するダンプトラック(40トン級)と油圧ショベル(4立方メートル級)を使用してシステムの実証を行った。実証では、エンジン回転数の検出については、エンジン回転部に光ファイバーセンサーを設け、エンジンルーム内の回転部に反射板を設置して実施した。検出した信号はPLCを介し数値化して無線通信でデータ用PC内のcsvファイルに書き込まれ、データは最低8秒間隔で取得。
さらに、各重機のキャビン内にGPSアンテナを搭載することで作業場所とエンジン回転数をひも付け、データを参照する際に作業箇所でのエンジン回転数を見られた。取得したデータはクラウドサーバ上へ自動的にアップロードされ、アップロードされたデータの可視化には「Tableau」を使用することで、大量かつ複雑なデータを簡潔に可視化し、必要な情報のみをピックアップ。データはTableauアカウントでログインしたPCであれば場所を選ばず任意のタイミングで閲覧・分析できる。
今後は、設置建機の拡大や長期間にわたるデータの取得によってデータ数を増大させ、作業内容や現場状況(油圧ショベルなら土質とその固結状態、車両であれば走行軌跡や高低差などの地形)をひも付ける。そこから、各条件による閾値を抽出し、各作業内容におけるエンジン回転数の最適値の導出を目指す。
こういったデータを用いて建機オペレーターへの通知を達成し、最終的にはエンジンのコントロールを目標に、省燃費運転を支援する緻密なエンジン稼働の管理を行えるようなシステムの確立を推進する。
また、システムにおけるエンジン稼働状況の経時変化を可視化したデータを活用し、建機の作業効率や作業量を算出して、建機の台数計画や組み合わせを策定し施工を進めることで、効率的な重機の運用を実現し、CO2の発生を最低限に抑制するだけでなく、生産性が向上することが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- フィンランドのICT施工事例、建設機械のオペレーターがBIMデータを活用
国土交通省は2019年7月17日、都内で「i-Construction推進コンソーシアム(第5回 企画委員会)」を開催し、現場でのICT活用の導入状況やICT施工の海外事例としてフィンランドの鉄道工事などを説明した。 - 5Gを使って建設機械の自動運転と精細映像伝送を実現、大成建設とソフトバンク
大成建設とソフトバンクが、5Gを使った建設機械の自動運転と精細映像伝送を実証。遠隔操作と自動制御ができる建設機械システムと可搬型5G設備との連携で実現した。 - 大成建設が建設機械搭載型AIを用いた人体検知システムを開発、多様な建機に対応
大成建設は、建設機械搭載型人工知能を用いて、人体を高精度に検知するシステム「T-iFinder」を開発した。今後は、建設現場でT-iFinderの検証を継続し、開発済の転圧走行無人化施工システム「T-iROBO」などを始めとする多様な無人化・自動化建設機械に適したAIと遠隔サポートなどの検知精度高度化に関する技術開発を進めていく。 - 日立建機が自律型建設機械の開発を容易にするシステムプラットフォームを開発
日立建機は、建設業で生産労働人口の減少や熟練技能者の高齢化が進行し、生産性の向上が喫緊の課題となっていることを踏まえて、解決策の1つとなる自動建機の開発を容易にするプラットフォームを開発した。