コンクリート吹付け作業の遠隔操作技術を改良し本格運用を開始、大成建設:ロボット
大成建設は、2019年に開発した山岳トンネル工事で使用しているコンクリート吹付け作業の遠隔操作技術「T-iROBO Remote Shotcreting」に改良を施した。今回の改良は複数のカメラを増設し、操作者は切羽から十分離れた吹付け機操作席から切羽近くに居るような臨場感を持ちながら吹付け厚さの管理を含む一連の作業を行え、吹付け作業の安全性向上と作業環境改善を実現する。
大成建設は、2019年に開発した山岳トンネル工事で使用しているコンクリート吹付け作業の遠隔操作技術「T-iROBO Remote Shotcreting※1」に改良を施し、本格運用を開始したことを2022年5月10日に発表した。
※1 T-iROBO Remote Shotcreting:ヘッドマウントディスプレイと魚眼ステレオカメラを用いたコンクリート吹付け作業に使用する遠隔操作技術。
セットアップ時間を従来の15分から1分に短縮
従来の山岳トンネル工事におけるコンクリート吹付け作業では、切羽(きりは)近傍で作業する操作者の安全性や粉じんによる健康被害が懸念されている。一方、厚生労働省ガイドライン※2では、労働災害を防止するため切羽への作業員の立ち入りを制限し、切羽近くでの作業を可能な限り機械化する方策の検討が推奨されている。
そこで、大成建設では、操作者が切羽に極力近づかずにコンクリート吹付け作業を遠隔操作で行う技術のT-iROBO Remote Shotcretingを開発し、施工現場で試験的に運用※3してきた。
※3 T-iROBO Remote Shotcretingの試験運用:2020年9月〜2021年8月に「大分212号跡田トンネル(東工区)新設工事」で性能検証を行い、セットアップ時間を従来の15分から1分に短縮するなど、その実用性を確認した。
その結果、従来方式では、操作者の作業位置、人力による魚眼ステレオカメラ設置、吹付け機のエレクターアームなどで死角が生じるといった課題があった。解決策として、T-iROBO Remote Shotcretingに改良を施し、より安全で効率的な施工を実現して、山形県鶴岡市の「国道7号鼠ヶ関トンネル工事」で、T-iROBO Remote Shotcretingの本格運用を開始した。
具体的には、T-iROBO Remote Shotcretingの改良で、吹付け操作者の位置を吹付け機の運転席に移した他、魚眼ステレオカメラの設置位置を吹付け機操作席の上部と前部の2カ所に一括で備えた。さらに、視認性に関して、複数のカメラを装着し死角を削減しただけでなくセットアップ時間を従来の15分から1分に短縮した。
加えて、大成建設では吹付けコンクリートの厚さをリアルタイムに把握できるシステム「T−ショットマーカー※4」も開発済みで、T-iROBO Remote Shotcretingと組み合わせることで安全かつ効率的な吹付けが行える。
※4 T−ショットマーカー:レーザー距離表示装置を用いて吹付け厚さをリアルタイムに把握するモニタリングシステム「T−ショットマーカー」を開発。コンクリート吹付け時に厚さを確認しながら作業できるため、切羽での作業効率と安全性が向上し、確実な吹付けコンクリート施工が可能となる。
今後、大成建設は、改良したT-iROBO Remote Shotcretingを、全国の山岳トンネル工事に展開し、吹付け作業の安全性向上と環境改善を進め、生産性の向上を図る。なお、T-iROBO Remote Shotcretingは、大成建設が取り組んでいる山岳トンネル掘削作業の自動化・機械化構想に関連した技術開発の一環となる。
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