設計BIMから足場や山留めを生成する「仮設計画ツール」、仮設計画のデジタルツイン実現:BIM
東急建設は、設計BIMと連携し、数クリックで足場や山留めなどの3Dモデルを生成する「仮設計画ツール」の全社運用を開始した。
東急建設は2022年5月19日、BIMを適用した「仮設計画ツール」の機能を拡充し、2022年4月より「足場ツール(更新版)」と「山留めツール(新規)」を社内の建築部門で運用を開始したと明らかにした。
仮設計画ツールで施工計画バリューチェーンを改革
仮設計画ツールは、BIM設計モデルから数クリックで施工計画モデルを生成することができるツールで、地上足場部材を配置する足場ツールと、地下掘削形状や山留め部材を配置する山留ツールを備え、施工計画業務を効率化させる。
これまでの足場ツールは、単種類の足場のみに対応していたが、約9割の作業所に対応できるように足場の種類を増やし、新たに山留ツールも開発したため、全社的に運用を開始した。
東急建設では、バリューチェーン全体でのデジタル活用に向けて、構造と設備の設計図書を3D化した「BIMファーストモデル」を2019年度より全建築作業所に導入し、施工計画にも活用している。
そのため、設計・施工一括の案件では、基本設計段階でのBIMファーストモデルに仮設計画ツールを活用し、「初期施工計画モデル」を作成。その後、各工程で連続した共通データ環境下で、新たな情報を付加していくことにより、施工段階の「実施施工計画モデル」へと進化させながら運用することが可能となる。
さらに、作業所、社内各部署、専門工事会社などが共通データ環境で相互連携するため、施工計画モデルと現実が瓜二つの状態となり、仮設計画のデジタルツインによる施工計画業務が実現する。
仮設計画ツールによって、建設生産プロセスで一貫した施工計画のバリューチェーン改革により、生産性や業務精度の向上など、QCDSE(品質・コスト・工程・安全・環境)に波及した相乗効果を社内外の枠を超えて向上することが期待される。
東急建設では長期経営計画で「デジタル技術」を競争優位の源泉と位置付け、BIMの積極展開を図っており、今後は、2019年度から実施している社内の施工BIM研修でも仮設計画ツールをはじめ、BIMデジタル利用拡大を促進するとともに、新たな施工シミュレーションツールの開発にも着手していく。
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