プレキャストセグメント橋で3次元計測技術による出来形管理を実施、鹿島建設:新工法
鹿島建設は、西日本高速道路発注の「吉野川大橋工事(徳島南部自動車道 吉野川サンライズ大橋)」で3次元デジタルカメラによる出来形管理を実施した。今後は、3次元デジタルカメラによる出来形管理を、吉野川大橋のようなプレキャストセグメント橋だけでなく、プレキャスト部材を活用した多様な工種に展開することも検討し、より一層の生産性と品質の向上につなげていく。
鹿島建設は、徳島県内にある四国横断自動車道で2016年2月〜2022年7月に行った「吉野川大橋工事(徳島南部自動車道 吉野川サンライズ大橋)」で、架設前のセグメント形状を3次元デジタルカメラにより全方向から計測し、架設線形を高精度に予測する出来形管理を実施したことを2022年4月8日に発表した。
架設線形予測値と架設線形実測値の誤差は最大でも約3ミリ
吉野川大橋工事の支間長は130メートルで、張出し架設工法によるプレキャストセグメント橋としては世界最長級。1支間あたりのセグメント数は41個で、2カ所の製作ヤードで合計490個のセグメントを製作した。
セグメント製作で採用している「ショートライン・マッチキャスト方式※1」は、従来セグメント製作直後に橋面を測量することで架設線形を予測し、基準セグメントの据え付け方向を決定していた。しかし、セグメント高に対してセグメント長が短く、張出し架設のセグメント数が多い場合は、従来の予測方法では精度が低下するという課題があった。そのため、一般的なプレキャストセグメント橋より高い精度で架設線形を予測し、基準セグメントの据付方向を決定しなければならなかった。
※1 ショートライン・マッチキャスト方式:先に製作したセグメント(OLDセグメント)の端面を型枠にして、次のセグメント(NEWセグメント)を作る方式
そこで、今回の工事では、より高精度な架設線形の予測を実現するために、3次元デジタルカメラを活用した。具体的には、予測精度の向上にはセグメント接合面に設けた計測点を正確に取得することが重要となることを踏まえ、橋面の測量だけでなく、セグメント単体形状を3次元デジタルカメラにより計測して座標を取得し、それらを組み合せることで架設線形予測の高精度化を図った。
さらに、3次元計測技術を活用した架設線形予測値は、実際の架設線形実測値とほぼ一致しており、その誤差は最大でも約3ミリであることを確かめた。加えて、従来の測量方法に比べて高精度に架設線形を予測し、基準セグメントを高精度で据え付けることができたことで、吉野川大橋工事での出来形管理はセグメント架設段階で線形を修正することなく要求される橋面高さを確保し、生産性向上を実現した。
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