大断面や自由な断面形状の地下空間を構築する技術をトンネル工事に適用、戸田建設:導入事例
戸田建設は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と神奈川東部方面線の都市トンネル技術委員会による協力・指導を受けて、推進工法により地中掘削を行い、先行して外殻構造部材(鋼製エレメント)を形成する地下水対応型の非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法」を開発し、高水圧下における大断面トンネル構築工事に適用した。
戸田建設は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と神奈川東部方面線の都市トンネル技術委員会による協力・指導のもと、外殻先行型の非開削トンネル構築技術である「さくさくJAWS(Joint All Water Shutting)工法」を、高水圧下における大断面トンネル構築工事に適用したことを2022年3月31日に発表した。
適用した工事では馬蹄形大断面トンネルを構築
近年、国内では、とくに都心部で、地上部に制約があっても地下空間を作れる非開削技術への需要が高い。さらに、ライフラインの地下化、地下鉄・地下街の整備、水害、地震への安全対策となる地下利用など、多岐にわたる用途に応じた断面の大きさと形状への対応が求められている。
しかし、通常、地下トンネルの構築に用いられるシールド工法や山岳工法などで、断面の大きさと形状に対処することが困難だ。
そこで、戸田建設はさくさくJAWS工法を開発した。さくさくJAWS工法は、推進工法を用いた外殻先行型の非開削トンネル構築技術で、外殻先行型は、対象となる地下空間が大断面でも、各エレメントの施工断面が小さいため施工時の周辺への影響を抑えられ、都心部でも安全に施工が可能。
加えて、独自のJAWS継手を用いることで、従来工法よりも施工性と止水性に優れ、矩形(くけい)や円形に限らず任意な断面形状に対処する。
なお、JAWS継手とは、推進時の摩擦を低減させるために、従来品よりも継手内のクリアランスを大きく確保し、止水性能を向上する目的で板バネ部の機能を追加している他、内部にモルタルを充填することで、鋼製エレメントの外側鋼板と同等の強度性能を確保している。
さくさくJAWS工法のトンネル構築手順は、まず推進工法により小断面の継手付き鋼製エレメントを順次掘削・連結し、鋼製エレメント間の土砂を内側から除去して、継手を拘束ボルトで固定する。
次に、継手間と鋼製エレメント内に高流動コンクリートを打設して、トンネルの外殻構造部材を形成。最後にトンネル内部の地山を掘削除去し、トンネル構造物を構築する。
特徴は、地下水位下でも薬液注入などの補助工法を省略し、鋼製エレメントを本体構造物として使えることで内部構築の手間を減らせ、複雑なトンネル断面形状への対応だけでなく従来工法と比べて施工延長の長距離化が図れる。
今回適用した工事では、駅ホームを新設するために内空224平方メートル(高さ14×幅19メートル)の馬蹄形大断面トンネル(延長約35メートル)を構築する。
具体的には、工事箇所の地上部は、病院や商業ビルなど堅牢な建物が密集し、利用に制限があり、最大0.35メガパスカル(MPa)の高水圧下における施工条件だったため、従来の非開削工法より周辺環境への影響が少ないさくさくJAWS工法が採用された。
また、鋼製エレメント42本の掘進精度管理値を±25ミリ以内(基準管※1は±10ミリ以内)として施工した結果、良好に外殻構造部材の構築が完了し、さくさくJAWS工法の優位性を確認した。
※1 基準管:1本目の鋼製エレメント。トンネル全体の精度の基準となるため、高い掘進精度を求められる。
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