解体分離が可能な新たな木質耐火部材、従来品と比べ耐火被覆層の材工費を30%以上削減:産業動向
熊谷組は、木造建築の解体に際して、主要構造部の分離を可能とする木質耐火部材「環境配慮型λ-WOOD」を開発した。今後は、中大規模木造建築が解体される数十年後の未来を見据えて、解体分離が可能な環境配慮型λ-WOODの実用化に向けた実験を行い、大臣認定を取得していく予定だ。
熊谷組は、主要構造部の分離を可能とする木質耐火部材「環境配慮型λ-WOOD(ラムダウッド)」を開発したことを2022年3月4日に発表した。
断熱耐火λ-WOODと比べて8ミリのスリム化を実現
同社では、環境に優しいことから、需要が高まると想定されている中大規模木造建築物※1向けの技術開発を進めている。
※1 中大規模木造建築物:環境に優しい構造で、建築時のCO2排出量が少なく完成後も多くの炭素を固定する
こういった取り組みの一環として、2021年には、以前に開発した「断熱耐火λ-WOOD」の中大規模木造建築への導入に向けて、主要構造部である柱、梁(はり)、床、壁における1〜3時間の耐火構造で国土交通大臣認定を取得した。
断熱耐火λ-WOODは、芯材(木材)と耐火被覆材(石こうボード)の接合に接着剤などを活用しているため、木材と石こうボードを再利用可能な状態で解体分離することが困難だった。木材に石こうボードが付着した状態では、木材と石こうボードを再生利用することが難しくなる。
また、近年、建設業界で拡大傾向にある中大規模木造建築物は、解体時に木材をどのように活用するかが重要な他、使用済みの石こうボードに関して、2012年3月に国土交通省が公表した「廃石こうボード現場分別解体マニュアル」では、分別の徹底などで最終処分場へ持ち込まないようにし、再資源化することを促している。
そこで、熊谷組は、現在建設されている中大規模木造建築が将来解体される未来を踏まえて、芯材(木材)と耐火被覆材(石こうボード)を容易に再利用可能な状態で分けられる環境配慮型λ-WOODを開発した。
環境配慮型λ-WOODは、芯材(木材)とその周囲を耐火被覆する石こうボードとの間に、接着剤を使用しないことで、解体時に容易に木材と石こうボードを分けられる。木材と石こうボードの分離は、再資源化と廃棄コストのカットに役立つ。さらに、耐火被覆層の厚さは、従来の断熱耐火λ-WOODと比べて、8ミリ薄く、耐火被覆層の材工費で30%以上の費用削減を達成した。
既に、熊谷組は、建材試験センターで、環境配慮型λ-WOODの柱(集成材)が2時間耐火性能を持つことを確かめた。
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