日建連 杉浦氏が教える「BIM/CIM導入成功のための人材活用術」建設HRセミナーレポート:BIM/CIM導入には「プロセスの理解」が不可欠(3/4 ページ)
国土交通省による全公共工事(小規模現場を除く)のBIM/CIM原則適用が2年後に迫っていることもあり、建設業界でのBIM/CIM導入の動きも活発になりつつある。だが、ビッグゼネコンなど一部の大手を除くと、BIM/CIM導入状況はまだまだ遅れ気味のようだ。建設業界の人事に関わる情報を発信するWebメディア「建設HR」は、2021年9月に日建連 杉浦伸哉氏を講師に迎え、プロセスとしてのBIM/CIMの理解と導入を阻む3つの要因にどう対処するか、さらにBIM/CIM人材活用術を解説するWebセミナーを開催した。
BIM/CIM推進を阻む3つの要因
メリットとは裏腹に普及が進まないBIM/CIM。そこには推進を阻む要因があるのではないか?要因に関して杉浦氏は、「技術」「マインド」「目的と手段の勘違い」という3つを挙げ、国交省のBIM/CIM推進委員会で使われた「令和3年度 BIM/CIM活用業務のリクワイヤメント(案)」の抜粋を引用した。「リクワイヤメント」とは、「発注者の要求事項」を意味し、「発注者は当該目的のために、以下の項目を検証したいので実施してもらたい」という要求で、BIM/CIM指定工事や指定業務では、今後の普及促進も見据えた重要課題とされる。
では、3つの阻害要因を念頭に、令和3年版の業務のリクワイヤメント(案)を見ていこう。資料中には、6つのリクワイヤメントが挙げられている。1のリクワイヤメントは「設計選択肢の調査」で、いわゆる配置計画を含めた事業計画の比較検討をBIM/CIMモデルで可視化し、経済性、構造性、施工性、環境景観や維持管理などの視点から合理的に評価・分析すること──を目的としている。以下、6まであるが、実践者によれば、それぞれの難度やそこから生まれる効果は大きく異なるとのことだ。そして、6つのうち、4、5、6のが特にリスクが高いと杉浦氏は指摘する。
例えば4の「概算工事費の算出」は、単に数量を出せば工事費も算出されるのではなく、現実には大変な手間がかかる。杉浦氏によれば4と5の「4Dモデルによる施工計画などの検討」は合わせて検討する必要があり、これを皆で6の「複数業務・工事を統合した工程管理及び情報共有」しながら進めていく形になる。
また、工事分野のリクワイヤメント(「令和3年度 BIM/CIM活用工事のリクワイヤメント(案)」)では、3Dモデルの活用で工事が楽になるというより、3DモデルやBIM/CIMの属性を用いて、受発注者間での検査業務や現場確認業務、立ち合い業務をどこまで効率化できるかが課題となるようだ。
3つのBIM/CIM阻害要因の課題と対処法
こうした課題解決は、受注者である施工会社にとっても発注者の監督官側にとってもメリットをもたらす。3DモデルやBIM/CIMを技術の1つとして捉えて実行し、その可能性をしっかり財産にしていくことが最大のポイントなのだ。従って、実施にあたっては膨大な数の基準や要領類を全て細かく理解するよりも、まずはリクワイヤメントとして「何が求められているのか?」を把握することが重要になる。リクワイヤメントに基づき自身の中で基準や要領類を体系立てて組み立てていくことでより深く理解することで自身の財産となるのである。
以上を踏まえて、前述した「技術」「マインド」「目的と手段の勘違い」の阻害要因に向き合うと、まず「技術」は3Dモデル作成を例に取れば、モデルの作り方や正しく図面を反映した3次元表現などテクニカルな基準類の理解も大事だが、同時に施工や工事管理、マネジメントなどで生かすための3Dモデルの扱い方も求められる。そうなると、線形の考え方やラウンド作成、座標系への理解なども必要だろう。
また、「マインド」については、単に「モデルを作って終わり」ではなく、「このモデルはこういう風に活用したいから、こんな作り方をしておけばもっと楽になるだろう」という、常に全体のプロセスと次段階の目的をあらかじめ理解しておくマインド──が欠かせない。
「目的と手段の勘違い」では、「3Dモデルを作ること」は、あくまで手段であって、目的とすべきではないことを意味する。この場合は、「3Dモデルを使って何々をしたい」というのが目的であり、その点を明確化することがポイントとなる。
BIM/CIM普及の阻害となる3つの要因を打ち破るには、やはりプロセスとしてのBIM/CIMを理解しながら、「なぜそうなっているのか」「自分ならどうするか」を自問自答しながら進まなければならない。それさえできれば、各種課題にも取り組んでいけるはずだ。つまり、BIM/CIM推進を阻むものがあるとすれば、結局のところそれは「自分自身にほかならない」のである。
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