大スパン建築の課題を解決、アルミとスチールのハイブリッド構造:新工法
アルコムが、アルミニウムとスチールを組み合わせたハイブリッドな建築システムを開発し、2月引き渡し予定の施工現場で導入した。ユニット化により建造物内部での作業を大幅に軽減、他の構法に比べて工期の短縮が期待できる。
アルコムが、アルミニウムとスチール(鋼鉄)を組み合わせたハイブリッド建築システムを開発し、2022年2月引き渡し予定の施工現場で導入した。
数十〜100メートルを超える大スパン建築は、トラス構造、アーチ構造、吊構造など構造的な工夫が必要となり、構成する建材は強度を考えてスチール製が多く採用される。しかし、スチール建材は部材重量が大きく、特大レッカー車が必須、かつ、建造物内部での作業が必須だという課題があった。
特大レッカー車はコストが高く、大きな幅員の搬入経路が必要となる。また、重量のあるスチール建材を天井に吊り上げるため、建造物内部に特大レッカー車を入れなければならないことも負担であった。
課題解決のため、同社は、強度があって軽量なアルミニウムに着目した。アルミニウム構造部材は、工場での加工精度が良く、建築部材のシステム化・ユニット化に適しており、現場で早く正確に組立てることができる。これにより、施工現場での作業を軽減し、建造物の外部からユニット化した建材を吊り上げることで、建造物内部での作業を大幅に軽減、他の構法に比べて工期が短縮できる。さらに、表面に酸化被膜を生成するため、耐食性に優れ、錆や腐食に強い特徴がある。
こうして、同社はアルミニウム構造部材の特性を生かし、アルミニウムとスチールを組み合わせた「ハイブリット構造」の開発に成功した。
同ハイブリッド構造では、柱や梁(はり)、筋交いなどの接合部を標準化し、規格基づいた十分な強度を確保する構造設計がなされる。アルミニウム建築は軽量なため作用する地震荷重が小さく、比較的地震に強い構造である。
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