戸建て一般流通材で非住宅の大スパンを実現、単価を4割削減する竹中工務店の新木架構システム:新構法
竹中工務店は、戸建て住宅用の一般流通材を用いて、非住宅の大スパンを可能にする木加構システム「ダブルティンバー」を開発した。ダブルティンバーは、特殊技術を必要としないため、戸建て住宅の協力会社でも施工することが可能で、小中断面集成材のみで構成することにより、構造部材を国産地域材100%とすることが実現する。
竹中工務店は2021年7月20日、戸建て住宅用の一般流通材を活用して、オフィスなど大スパンの建物を実現する新木架構システム「ダブルティンバー」を開発したと公表した。現在、北海道で施工中の木造2階建て「北海道地区FM(ファシリティマネジメント)センター」に初適用する。
国産地域材の採用率100%を実現
国内の林業では、戦後に植林された人工林が本格的な伐採期を迎えている。全国で国産材活用に向けた動きが活発になるなか、竹中工務店が顧客の事業展開や施設運用などFM視点での企画からアフターサービスに至る支援業務を担うFMセンターの建築を進めている北海道でも、豊富な森林資源活用のニーズが高まっているという。しかし、建築材については、道内総需要量に対する道産材利用率は22%程度にとどまるなど、国産地域材の活用が進んでいない。
また、道内では、一般流通材として戸建て住宅用の小中断面集成材の生産・加工体制は充実している一方で、大スパンの建物に使用できる大断面集成材の加工体制は本州に比べ限定的で、道内の木材を一度道外で加工し、再度運び込んでいる。
今回、開発したダブルティンバーは、オフィスなどの非住宅分野の建物でも、戸建て住宅用の一般流通材を使用し、地元の住宅を専門とする協力会社が施工できるため、道内だけに限らず全国各地の国産地域材の地産地消に貢献する木架構システムとなっている。システム採用により、大断面集成材で計画した場合と比較して、40%程度のコスト低減が見込める。鉄骨造の同規模建築(材料と運搬)と比較した場合には、CO2排出量を70%ほどカットすることができる。
ダブルティンバーは、梁(はり)と柱をそれぞれ二重部材の構成で、二重柱と二列梁とすることにより、荷重分散を図り部材の小断面化を実現する。また、二列梁を受ける直交梁を二段配置とすることで荷重を上下の梁へ分散させて、それぞれの梁断面を小さくすることが可能。さらに、設計・調達・製作・施工の各フェーズで、特殊技術を必要としない汎用性の高いシステム。
在来軸組工法は、柱から柱までの間に1本の梁を架け渡すことが一般的だが、システムで採用している梁の構造は連続して配置した梁の両端部の接合位置をあえてスパンの内側に寄せた架構としている。これにより、接合部間をつなぐ梁スパンを短くして荷重による変形を低減することで、梁断面を小さくしている。加えて、梁を二列または二段配置とすることで、一層の小断面化を可能にした。
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