“鋼構造物の現場DX”をもたらす先端事例 機械学習のボルト締め付け判定など【土木×AI第9回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(9)(3/3 ページ)
連載第9回は、さまざまな業務制約に加えて、豊富な経験や専門知識も必要とされるインフラ鋼構造物の施工や維持管理の業務で、作業効率化や品質向上をもたらすAI活用について、多数の論文を参照しながら、先端研究を紹介します。
素地調整時の除錆度を深層学習で分類する「判定支援システム」
塗装の劣化や異常さびが確認された場合には、防食機能を維持するために、腐食原因を排除した上で、塗装などの対策を講じています。その際、さびや腐食原因を排除するために行われるのが素地調整(別称:「けれん」)です。素地調整の品質が低いと、再劣化などの原因となります。
素地調整の状況は、「除錆度」として評価されますが、現場作業での時間や環境の制約のなかで正確な判断をすることは難しく、技術者によって偏りが生じてしまう問題があります。そこで、文献5「深層学習を用いた鋼構造物の素地調整時の除錆度判定システム」※5では、腐食した耐候性鋼材の素地調整時の除錆度(Sa1,Sa2,Sa2 1/2,Sa3の4つのクラス)を、鋼材表面状態から定量的に判定可能な深層学習を用いた「判定支援システム」が提案されています。
このように、鋼構造物では、目視での検査や判断など、作業制約が厳しかったり、高い専門性や経験が求められたりする現場業務を中心に、業務効率化や施工品質の向上につながるDX(Digital transformation)の1つとして、AI導入が積極的に進められていることが分かります。なお、文献6「鋼構造における人工知能活用の現状と課題・展望と期待」※6では、鋼構造へのAI適用について系統的な整理が試みられています。
※6 「鋼構造における人工知能活用の現状と課題・展望と期待」大関誠,中村聖三共著/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p97-102/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年
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