竹中工務店の「建設デジタルプラットフォーム」をオンプレミスからAWSへ完全移行、ITコスト25%削減:クラウド(3/3 ページ)
竹中工務店は、営業から、設計、施工、維持保全に至る各プロセスや人事・経理なども網羅したプロジェクトに関わる全データを一元的に蓄積し、AIやIoTなどで高度利活用するための統合基盤として「建設デジタルプラットフォーム」を運用している。しかし、今以上の業務効率化や複数のプロジェクトを横断したデータ活用を進めるために、既存のオンプレミス環境から、AWS Japanのクラウドサービス「AWS」へと完全移行することを決めた。
200を超える幅広いAWSのサービスで建設業を業務支援
AWS Japanでは2006年より、他社に先駆けクラウドサービスを提供。現在では190カ国国以上、日本では数十万以上の顧客を抱えるまでに至っている。
クラウドのAWSには、200を超える幅広いサービスが紐(ひも)づいており、このうち竹中工務店には、コンピューティングやストレージをはじめ、最近ではIoT、機械学習、ロボット工学なども供給している。
AWS Japan 小林氏は国内の建設業が直面する多くの課題に対しては、AWSのビッグデータ、人工知能、機械学習が有効だとする。「一見するとそれぞれが全く異なるサービスのようだが、データに基づくことは共通している。そのためAWSでは、データの“フライホール戦略”を建設業向けでも重視している」。
フライホール戦略とは、まずクラウドにデータを集め、必要なときにとりだせるように保存して、データからアプリケーションを作ると同時に、新たな知見を生み出すデータレイクのデータを分析。最終的にはイノベーションを起こし、さらに得られたデータを再び利活用するまでのデータ活用のループを指す。
フライホール戦略を踏まえ、AWS Japanが提供するのは、建設業のためのデータプラットフォーム。クラウドのプラットフォーム上で、数多くのサービスを用意することで現実世界とクラウドの世界をつなぎ、双方向でやりとりする基盤に成り得るとしている。
現状でもAWSはクラウドにさまざまなサービスを拡充しているが、直近でも「AWS IoT TwinMaker」をリリース。リモートから設備機器の運用データにアクセスして、機器の問題を診断したり、室内の温度や稼働率、空気品質のデータをライブまたは履歴で監視したりなどの活用方法が検討されている。
AWSを利用するメリットについて小林氏は、サーバレスの特性で、「アプリケーションの開発や運用の工数削減、市場投入のスピードアップが図れるだけでなく、蓄積される膨大なデータを処理可能な拡張性、重要な情報に対してのセキュリティを確保と企業の枠を超えた安全な連携が実現し、業務フロー全体をデジタル化で支えられるようになる」と訴求した。
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