濃縮余剰汚泥対象の下水処理場向け「オゾン可溶化反応装置」を開発:製品動向
三菱電機と日鉄エンジニアリングは、下水汚泥に含まれる微生物を主体とする難分解成分をオゾンガスで効率的に溶かす「オゾン可溶化反応装置」を開発し、日本下水道新技術機構の建築技術審査証明を2021年7月9日に取得した。バイオガスを20%以上増産し、温室効果ガスの削減にも貢献する。
三菱電機と日鉄エンジニアリングは、下水汚泥に含まれる微生物を主体とする難分解成分をオゾンガスで効率的に溶かす「オゾン可溶化反応装置」を開発し、日本下水道新技術機構の建築技術審査証明を2021年7月9日に取得した。
濃縮余剰汚泥は微生物が主体のため、初沈汚泥に比べて消化槽での分解が遅く、バイオガス発生量も少ない。既存の下水汚泥からバイオガスを増産させる方法では、濃縮余剰汚泥とオゾンガスを効率的に反応させることは難しく、注入したオゾンガスの半分以上が反応せずに流出するという課題があった。
同装置は、気体状または水に溶解したオゾンが下水汚泥に接触すると、下水汚泥中の微生物を覆う有機性物質や微生物の細胞壁を酸化分解する。オゾンは有機物との酸化分解力が高く、消化槽では分解しにくい難分解性成分も分解できる。
今回、特殊な攪拌翼を用い、下水汚泥に注入した高濃度オゾンの気泡を微細化して均一に分散させる撹拌技術を開発した。これにより、散気による一般的なオゾン処理ではオゾン消費率30%以下だった濃縮余剰汚泥を、オゾン消費率80%以上で可溶化する。可溶化した濃縮余剰汚泥の利用により、分解時に発生するバイオガスは、同装置を設置しない場合との比較で22%増産を確認した。濃縮余剰汚泥の可溶化により消化槽における下水汚泥の分解を促進し、廃棄汚泥の削減と廃棄汚泥焼却時に発生する温室効果ガスの削減に貢献する。
同装置は下水処理施設の余剰汚泥の濃縮装置と消化槽の間に設置し、濃縮余剰汚泥を対象に可溶化を行う。容易に設置でき、大規模システムの新規構築が不要だ。
三菱電機が高濃度オゾンによる可溶化処理技術の開発、日鉄エンジニアリングがオゾン可溶化反応装置の設計・開発を担当した。今後、実証試験の結果を基に実用化を目指すという。
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