Microsoftが提言するニューノーマル時代のクラウド化メリット、「目からウロコ!これからのクラウド活用術」<前編>:A-Styleフォーラム Vol.8(4/4 ページ)
住宅用3DCADメーカー福井コンピュータアーキテクトは2021年10月1日、Webセミナーイベント「A-Styleフォーラム Vol.8」を開催した。建築分野におけるクラウド活用をメインテーマに、日本マイクロソフトによる基調講演をはじめ、指定確認検査機関の建築確認申請電子化の解説、実力派設計コンサルによる設計効率化テクニックの紹介など、多彩かつ充実した3時間となった。前・中・後編と3回に分けてお送りするうち、前編の今回はオープニングセッションと日本マイクロソフトの基調講演を中心にレポートする。
クラウド化のメリット〜DXのはじめの一歩〜
クラウドを生かしてDXに着手する事例は増えているが、ではどのようなメリットがあるだろうか。小杉氏はまず、オンプレミス環境とクラウド環境を、柔軟性・拡張性、情報共有、メンテナンス、サポート、将来的な対応、IoT機器への接続などの8つの観点から比較した。このうち、ポイントとなるのは安全性と障害対策、コストの3点。
まず安全性だが、オンプレミスはデータを自社に格納するため、自分たちの規定で自分たちが運用しなくてはならない。一方、クラウドの場合はデータをクラウド上に格納し、クラウド事業者が高度なセキュリティ機能を提供し、発展させながら安全性を確保していくことになる。
障害対策についても、オンプレミスではデータやサーバの冗長化、リストア先を自ら準備する必要があるから、これも外部リソースの活用が可能なクラウド側に利がある。冗長化やリストア先は事業者側が準備するし、Web経由で復旧も可能なのだ。データを確実に守り、活用しながらビジネスを進めていく上では、極めて有効な手段となり得る。
また、コストについても、設備用の先行投資や初期費用が掛かるオンプレミスに対し、ハードウェアや周辺機器、空調や電源などが不要で月額や従量制での支払いも可能なクラウドにも軍配が上がる。
もう一点、クラウド化メリットとして、小杉氏が取り上げたのがサステナビリティである。昨今はいかにして地球環境をサステナブルな状態にしていくか?が重視されるようになったのは誰もが認識している。小杉氏によれば、Microsoftも環境問題への取り組みに注力しており、2030年までにカーボンネガティブや二酸化炭素排出量を削減するといったチャレンジを進めている。その取り組みのなかでは、オンプレで運用していた業務のクラウド化を進めることで、既に最大98%以上のCO2利用効率を実現し、エネルギー効率も最大93%向上させている。
「コロナ禍とともにニューノーマルの時代が到来した。そして、クラウドはニューノーマルに必須の要素なのである」(小杉氏)。もはや避けられないリモートワーク時代の到来に対して、クラウドは場所に捕らわれず、高度なセキュリティ管理にも対応する。業務や規模の急速な変化にも柔軟に応え、運用管理のコストや手間も削減が見込める。そして、これらがニューノーマルの時代に有効なツールになるのは言うまでもない。
その実例として、小杉氏は建設業におけるクラウド活用事例で、「Power Platform」や「Teams」を活用して建築生産プロセスを変革し、建設業のシチズンデベロッパーを目指す鹿島建設、AR作成ツール「PTC Vuforia Studio」で施工分野でもAR活用を試みる飛島建設、BIM/3DCADの作業環境で「Azure Virtual Desktop」を採用した熊谷組をそれぞれ簡単に紹介し、「プラットフォーマーとして福井コンピュータアーキテクトのようなパートナーとともに、リモートワークや作業効率化など、ユーザーの働き方改革に貢献していきたい」とセミナーを終えた。
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