Microsoftが提言するニューノーマル時代のクラウド化メリット、「目からウロコ!これからのクラウド活用術」<前編>:A-Styleフォーラム Vol.8(3/4 ページ)
住宅用3DCADメーカー福井コンピュータアーキテクトは2021年10月1日、Webセミナーイベント「A-Styleフォーラム Vol.8」を開催した。建築分野におけるクラウド活用をメインテーマに、日本マイクロソフトによる基調講演をはじめ、指定確認検査機関の建築確認申請電子化の解説、実力派設計コンサルによる設計効率化テクニックの紹介など、多彩かつ充実した3時間となった。前・中・後編と3回に分けてお送りするうち、前編の今回はオープニングセッションと日本マイクロソフトの基調講演を中心にレポートする。
なぜ日本でDXが必要なのか?
2020年にコロナ禍が始まり、働く環境も激変した。2019年まではネットへのアクセスは会社から、セキュリティ管理も会社さえ守られていれば大丈夫という状態だった。多少の季節変動はあっても、1年を通じて働き方に大きな変化はなく、多少の無駄が出てもやっていけた。
しかし新型コロナウイルスが一変させた。勤務は自宅からのリモートワークが基本となり、遠隔環境でのセキュリティが重要になり、変化する業務規模や業務形態への柔軟な対応が求められようになった。そして、もう一つ大きく変わったのは、先行きが見えない状況のために、情報システムに関わる徹底した“コスト管理”が必要となった点だった。
日本企業はこれまでにも徹底的なコスト管理を行ってきたが、情報システム分野のそれは十分なものではなかった。小杉氏によれば、導入したCPUが20%程度しか使われず、HDの利用領域も10%にとどまるが、メモリは逆に不足しがち──という企業も多々あったと指摘する。IT関連コストを30%も抑制可能だったケースも経験したと振り返り、コスト管理はさらに徹底する余地があると断言した。
さらにコロナ禍で明らかになった新たな課題として、小杉氏はリモートワーク環境の構築を挙げた。この1年、小杉氏も「どこから着手を?」「サーバの拡張や改編に伴う調達や構築が手間で……」「高度なセキュリティ実装が大変だ」という顧客の声を多く聞いたとのことだ。
繰り返しになるが、DXとは単にDX技術の導入ではなく、「デジタルを駆使してビジネスモデルや働き方を革新していくこと」と小杉氏は警告する。古いシステムの刷新やアナログ業務のデジタル化は進めるべきだが、一方でシステム作りなど、内製ばかりでなく外部環境の活用も重要だとする。また、デジタル活用に向けた組織改革、なかでもデジタルを活用できる人材育成は必須であり、環境を整えるだけでなく、社員がデジタルに接する機会を増やしていくことが求められる。最終的には、DXの流れで大きなポイントとなる「デジタル製品・サービスの創出」へと行き着く。
各業界ではどのようにDXを進めているか、東京ガスや建物管理会社の事例
「どのようにDXを進めているか」の視点で見た各業界のDX事例では、生徒1人1台のPCやタブレット端末の配布を進める教育分野の「GIGAスクール構想」、AIやIoTを駆使して生産現場の自動化を進める製造業、ブロックチェーンやモバイル決済などの展開を進める金融分野のFinTech(フィンテック)などがあるだろう。
多様な領域で進みつつあるDXを概観し、特徴的なものとして、小杉氏はオンプレミス環境からクラウド化に取り組んだ東京ガスグループの東京ガスiネット、建物管理会社のアサヒファシリティズ、そして西条市教育委員会の取り組みを解説した。
デジタル化による高付加価値を目指す東京ガスは、2017年に自社システムセンターで運用していたシステムのクラウド マイグレーションを開始。数百システムのクラウド移行を進め、2020年8月時点で約100システムの移行を完了した。
小杉氏は「パブリック クラウドの活用とゼロトラスト セキュリティの構築により、どこにいても仕事ができる環境整備が社会的にも求められている」という先方の言葉を紹介した。次に竹中工務店グループのアサヒファシリティズの事例では、オンプレミスのサーバを用いていた旧システムをクラウド化し、新たな建物情報プラットフォームを構築した。クラウド化そのものが目的ではなく、より優れた建物管理サービス提供のために、クラウドを利用した事例であるということが強調された。
西条市教育委員会の事例では、小学校のPC教室を中心にICT教育を推進してきた同委員会が、コストと手間を抑えて安定運用するためにクラウド化していった。そのなかでセキュリティ面が重視されたことから、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」が採用された。先方担当者が語った「多忙感を解消して教員が教育活動に専念できる環境作り」を引用し、「デジタル化や外部リソースの活用により、多忙感を解消することで、自分たちが果たすべき役割を果たしつつ、より高い価値を生み出せる時間を確保していくべきだ。それは、どのような職種や職業の方にも共通している」と小杉氏は語る。
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