NTTグループが空調最適化の制御システムを開発、省エネ5割減を目指し名古屋ネクスタビルで実証:BAS
NTTアーバンソリューションズ、NTTコミュニケーションズ、NTTファシリティーズは、ビル内の空調を最適制御するためのAIを用いたシステムを開発した。空調制御システムでは、ビル内のセンサーで人流や温湿度、空調設備の稼働状況といった各種データをクラウド上に集め、AIのエンジンで解析。空調制御のシナリオを作成し、空調設備をコントロールするBASやBEMSを介して空調を最適化し、快適性を維持しながら、エネルギー消費も5割削減を目標としている。
NTTアーバンソリューションズ、NTTコミュニケーションズ、NTTファシリティーズの3社は、ビル内の空調を最適制御するためのシステム開発に着手し、NTT都市開発が開発を進める次世代型先進オフィスビル「アーバンネット名古屋ネクスタビル」で実証実験を2022年より開始する。
実証実験は、NTTの「街づくり DTC」と4Dデジタル基盤の2技術を生かしたNTTの研究所やNTTグループ全体で取り組む技術実証の一環であり、「カーボンニュートラルの達成」に向けた取り組みでもある。
自動制御でエネルギー消費の5割削減を目標
一般的なオフィスビルでは、エネルギー消費の約5割を空調が占めており、NTTグループが掲げる2040年のカーボンニュートラルを実現するうえでは、空調の省エネ化が重要と見なしている。ただ、従来の設備更改や運用見直しによる改善だけでなく、新たにAIを用いた空調制御といった別の切り口からのアプローチを試行している。
アーバンネット名古屋ネクスタビルに導入する空調制御のシステムは、カーボンニュートラルを目指すエネルギー消費と快適性の両立を実現するために、NTTグループの持つ人流予測・環境再現・最適制御算出の技術を組み合わせ、各種センサーからデータを収集。人流などを考慮した室温変化の予測と人々の快適性を推測して、刻々と変化する状況に応じた最適な空調制御「シナリオ算出」、シナリオに基づく「自動制御・監視」を行う。実証実験では、ビル共用部の空調を対象に制御し、快適性を担保しつつ、エネルギー消費の5割削減を目標としている。
各社の役割としては、NTTアーバンソリューションズは自社が保有するアセットでのサービス企画やユースケース検討や検証を行う。NTTコミュニケーションズは都市に関するさまざまなデータを集約するプラットフォーム「Smart Data Platform for City」を活用した空調制御最適化システムの構築、稼働検証と実用化の検討、NTTファシリティーズはビル運用技術・空調制御ノウハウの提供、NTTはNTTスマートデータサイエンスセンタにおける予測技術開発と街づくりDTC基盤に資するアルゴリズム開発、NTT都市開発は実証フィールドでサービス提供のための各種調整や環境整備などを準備する。
実証実験を通じて得られた知見を踏まえ、新規・既存物件への展開も見据えた継続的な検証を行い、「NTT Green Innovation toward 2040」構想に基づくカーボンニュートラルの実現を目指す。また、共用部だけでなく専有部の空調制御でも検討を進め、ビル全体の空調制御に取り組んでいく。
さらに、街づくり DTCで実証中の他サービスとの連携により、おもてなしサービスの個人属性/特性を活用し、一人一人のその時の状況に応じたパーソナライズ空調やフードロス削減の人流予測とリンクさせ、単に脱炭素に貢献するだけでなく、個人にとって組織にとってのパフォーマンス向上や満足度向上も両立させることも構想している。
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