ロックボルト打設専用機にモルタル供給装置と遠隔操作機能を搭載、大成建設:山岳トンネル工事
大成建設は、ロックボルト打設専用機「BOLTINGER」にモルタル供給装置を搭載し、ガイダンス機能付き遠隔操作システムを実装した。
大成建設は、2020年9月に古河ロックドリルと共同開発したロックボルト打設専用機「BOLTINGER※1」の機能を拡張したことを2021年10月20日に発表した。
※1 BOLTINGER:山岳トンネル工事でロックボルト打設作業に用いる6メートル継ぎ仕様のロックボルト打設専用機
削孔実績の自動記録が可能に
山岳トンネル工事では、発破掘削における一連の作業(削孔、装薬・発破、掘削・ズリ搬出、支保工建て込み、吹付け、ロックボルト打設)を切羽(きりは)近傍で繰り返し行うことから、切羽で土砂や岩が剥がれ落ちる「肌落ち」に配慮し、安全性と生産性の向上を実現する対策が求められる。
解決策として、大成建設では、「支保工建て込み工法」「コンクリートの遠隔吹付技術」「落石検知技術」など、切羽付近に作業員が立ち入ることなく、高効率かつ安全に掘削作業を可能とする技術開発を進めてきた。
こういった取り組みの一環として、大成建設と古河ロックドリルは、既に開発したBOLTINGERの効率化と安全の向上を図るため、モルタル供給装置と、穿孔作業をガイダンスにより誘導して遠隔操作が行える機能を搭載した。
具体的には、これまで2〜4トン級の車両に搭載していたモルタル供給装置を全てロックボルト打設専用機の後方に搭載することで、モルタル供給装置を操作する作業員と従来の車両が不要となり、省力化を達成。
加えて、あらかじめ計画したロックボルト穿孔の打設位置、角度、長さを操縦席のモニター画面上に表示し、画面上での簡単な操作だけで施工を行えるガイダンス機能を導入した。これにより、設計上の打設位置を正確に削孔でき、削孔実績の自動記録が可能となり、穿孔ブームを所定の位置に合わせやすくなった。
また、穿孔時の多様なデータ(位置情報、穿孔速度、各種圧力など)を取得し、得られたデータをBIM/CIMモデルに自動統合することで、3次元的に地山状況を把握することを実現し、岩判定や補助工法選定の判断材料として使える。
なお、今回の機能開発は、大成建設が取り組んでいる「山岳トンネル掘削作業の自動化・機械化構想※2」の一環で、今後は、装薬や発破などの技術開発により省力化と遠隔化を図り、将来はトンネル掘削サイクル全体の完全自動化を目指す方針だ。
※2 山岳トンネル掘削作業の自動化・機械化構想:山岳トンネル掘削における安全性向上と省人化による生産性向上を目的として、施工の自動化・機械化技術の開発を進め、省力化と遠隔化を図るとともに、将来は監視員1人だけで実施できる掘削作業を実現し、完全自動化を目指す構想
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