山岳トンネル工事の出来形検査をタブレットで遠隔立会が可能に、NEXCO西日本の工事に試験適用:山岳トンネル工事
清水建設は、山岳トンネル工事における検査・管理業務の合理化を目指し、タブレット端末を用いて現場を撮影し、検査員が事務所PCで確認できる「リアルタイム遠隔立会システム」を開発した。
清水建設は、山岳トンネル工事で、発注者の検査員が現場に行かずに出来形検査ができる「リアルタイム遠隔立会システム」を開発した。
発注者の品質・出来形検査をリアルタイム遠隔で可能に
新システムは、清水建設が進める次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の一環として開発したもので、発注者の検査員が現場に赴くことなく、遠隔地の端末上で施工状況の確認から、記録写真・帳票類の承認に至る一連の検査プロセスを完結できる。2018年11月から、NEXCO西日本が発注した和歌山県内の「湯浅御坊道路川辺第一トンネル北工事」の一部で試験適用を開始した。
通常、山岳部のトンネル工事は、発注者の工事事務所が現場から離れているケースが多い。そうした現場では、品質・出来形検査に立ち会う発注者の検査員が、長時間を掛けて現場まで移動しなければならず、日程調整が難航することが少なくない。
開発した遠隔立会システムは、ICTを活用して物理的な距離を克服し、発注者・施工者双方の検査・管理業務の生産性向上を図るツール。発注工事における施工管理の業務効率化に取り組むNEXCO西日本から、システム機能を評価され、実現場での試験適用に至った。
遠隔立会システムは、テレビ会議機能と検査値入力・立会写真の撮影機能を備えた遠隔検査ソフト、施工者用のタブレット端末、発注者の工事事務所に設置する閲覧用PC、サーバPC、トンネル内無線通信網で構成される。システム利用時には、工事事務所の閲覧用PCとトンネル坑内のタブレット端末をインターネット回線でつなぎ、タブレットで撮影した坑内のライブ映像と、施工者が入力する施工状況・検査値などの検査データを発注者・施工者間で共有しつつ、品質・出来形検査を進める。
施工者は検査データを付与した立会写真を撮影し、発注者側は承認ボタンを押すことで承認手続きが完了。承認後の写真・帳票データは即座にサーバに保存され、Web上で閲覧・ダウンロードでき、工事関係者間でリアルタイムに検査結果を共有することができる。
適用したトンネル工事は、工期が2015年10月1日〜2019年9月22日で、工事延長は2706.5m(トンネル2641m、土工65.5m)。吹付けコンクリート厚の検測時、覆工コンクリート打込み状況の確認時にシステムをテストして、遠隔立会検査の実用性を検証する。併せて、覆工コンクリートの圧縮強度試験を対象に、現場事務所とコンクリートプラント試験室をつないだ遠隔立会にも導入するという。
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