操縦しながら転圧回数を“見える化”する三井住友建設の「AR転圧管理システム」:ICT土工
三井住友建設は、振動ローラーの運転手がARを介して、転圧回数を確認しながら転圧作業を行える「AR転圧管理システム」を開発し、現場での試験導入を経て有効性を確認し、実用化にめどをつけた。
三井住友建設は、土木工事の転圧作業で、振動ローラーの運転手が操縦しながら転圧回数を確認できる「AR転圧管理システム」を開発したと2021年11月29日に発表した。
重機を操縦しながら、目線を変えずに転圧回数を把握
AR転圧管理システムは、転圧回数の色別画像を運転席のフロントガラスに設置した透過型ディスプレイにAR技術で表示する仕組みで、運転手は目線を変えずに転圧回数を把握しながら操縦できるため、安全性と生産性の向上が実現する。
従来の振動ローラによる転圧作業は、転圧回数を運転席内に設置したタブレット端末に表示される色別の2次元画像で確認をしていたが、操縦中に目線を動かすために安全性の問題や画面が小さく転圧箇所の確認精度が課題としてあった。
そこで三井住友建設ではAR技術を用い、盛土の転圧回数の色別画像をフロントガラスに設置した透過型ディスプレイに、実際の盛土に重ね合わせて転圧回数を見える化する「AR転圧管理システム」を開発した。
AR転圧管理システムは、透過型ディスプレイ上に設置した2台のアイトラッキング(視点計測)カメラが運転手の目の動きを認識し、目線に追従してAR画像の表示(範囲や方向)を補正する。また、ディスプレイに搭載した加速度センサーで車体の傾斜(前後左右)認識や車両装備のGNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)による車体位置の特定に加え、車両前面に設置した360度カメラでも車体の方位を自動で検知し、AR画像の見え方を最適化する。
現在、国土交通省の主導でICT技術を活用した土工事を対象に生産性向上が推進されいることを受け、三井住友建設では今後、AR転圧管理システムを造成工事現場で稼働している振動ローラに導入し、盛土転圧作業での作業性と安全性を確認する。
さらに、開発したAR技術を応用して、ブルドーザの敷均(しきなら)しやバックホウによる法面仕上げにも適用を検討していく。
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