2021年度の住宅用断熱材市場は前年増の1691億円、改修需要で出荷量アップの見通し:産業動向
矢野経済研究所は、断熱材のメーカーと業界団体を対象に、国内住宅用断熱材市場の動向について調査したレポートを発表した。調査結果によれば、2021年度の住宅用断熱材市場は、金額ベースでは前年度比1.9%増の1691億3000万円となると予測した。
矢野経済研究所は、断熱材のメーカーと業界団体を2021年7〜9月に調査し、国内住宅用断熱材市場における出荷量や市場規模、分野別、参入企業の動向、将来の展望を発表した。
2020年度の住宅用断熱材市場は数量ベースで前年度比8.7%減
調査結果によれば、2020年度の住宅用断熱材市場は、数量ベースでは前年度比8.7%減の34万3304トンとなり、金額ベースでは同比7.7%減の1659億5000万円と推計した。断熱素材の種類により前年度からの落ち込み幅は4〜12%減と差はあるが、全種類の断熱素材が減少傾向になった理由は、コロナ禍で新設住宅着工数が減ったからだ。
上記を要因に、断熱材の各メーカーは、リフォーム向け製品のリリースや販路の拡大、リノベーション計画への参画など、断熱リフォームへの取り組みを積極化させている。そして、現時点では各メーカーともリフォームでの売上比率は低いが、国内ではカーボンニュートラル社会の実現に向け既築住宅の有効活用が推奨されているため、リフォームで断熱材の需要が高まる可能性がある。
加えて、長期的には新設住宅着工数は低減していくと予想されており、断熱材の各メーカーが事業を拡大と維持するためには、既築住宅向けへの取り組みは不可避で、今後改修向けの展開が加速するとみられる。
2021年度の住宅用断熱材市場は、数量ベースでは前年度比2.1%増の35万600トンで、金額ベースでは同比1.9%増の1691億3000万円となる見込みだ。
国内の住宅用断熱材市場を振り返ると、これまで大手ハウスメーカーなどを中心とする住宅供給会社による「断熱等性能等級4の標準仕様化」や「ZEH(Net Zero Energy House)」といった住宅高断熱化ニーズの拡大などで、断熱材の使用機会や住宅1戸当たりの使用量が増え、マーケットは拡大してきた。
今後は、2025年度以降に、新設住宅の省エネ基準適合義務化に向けて、ハウスビルダーや地域工務店などでも高断熱化に向けた動きが活発化することから、断熱材市場は拡大する見通しだ。
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