電力線でネット環境を構築、規制緩和で名大学生寮や地下駐車場などにも導入が広がるパナソニックの「HD-PLC」:LANやWi-Fiよりも低コストで施工可(2/4 ページ)
HD-PLCは、電力線を使った通信技術で、既設の電気線に高周波化したデータを乗せて通信を行う。2021年6月30日には、HD-PLCの利用に関する電波法が改正されたことで、これまでは導入が難しいとされていた工場などの大型施設や地下駐車場へも、従来よりもコストを抑えた形でネット環境を整備することが可能になった。
ますます高まる「HD-PLC」への期待
今回のセミナーでは、一般的なLANやWi-Fiの活用が困難な状況でのHD-PLC導入事例を多数紹介。その中から、特徴のあるものを抜粋して紹介する。
■居住向けインターネット通信(名古屋大学・学生寮)
外国人研究者・学生向け集合住宅(137部屋の寮)の事例では、昨今の社会状況もあり、学校の授業がオンライン化されるなど、学生寮でインターネット環境を早急に整える必要が生まれた。しかし、有線LANの敷設には工事に時間がかかり、ポケットWi-Fiの配布では回線使用料の費用がネックとなった。
そこでHD-PLCの導入を検討するが、寮という性格上、通信速度も求められた。HD-PLCの実効通信速度は、UDPで30Mbps、TCPでは20Mbps程度となる。これを137戸で分割すると、1戸あたりで、超低速のネット環境しか提供できない。
そのため今回の導入では、HD-PLCでデータを流す系統をキュービクル1内のブレーカーごとに複数分割。それぞれの系統内に、コアとコンデンサーなどで構成するフィルターを設置して、20Mbpsを最大7戸で利用するように工夫した。
※キュービクル:高電圧を施設で使える電圧に変換する機器を収めた設備
これによって、最大7戸のHD-PLC系統が21回線できることになった。20Mbpsの速度を寮全体で分割すると、超低速のネット環境になるが、系統を分割したことで7戸が同時に利用しても1戸あたり2.8Mbpsほどの通信が可能になる。
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