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都市木造の現在、建築基準法と木造の最新耐火技術木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(6)(2/2 ページ)

本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材活用にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。連載第6回となる今回は、国内の都市木造建築物と、都市での木造を実現するためにクリアすべき建築基準法や耐火技術について採り上げる。

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プラスターボードの活用による耐火性能の向上

 準耐火性能を満たす方法には、連載の第2回でも述べたように、プラスターボードなどによる被覆があり、S造やRC造といった他の構造と比べて、相対的に安価でコストメリットがあります。

 一部をRC造とする事で耐火性能を確保する方法も存在します。具体的には、外壁をRC造といった耐火構造とすることで、準耐火構造が実現し、内部を自由に設計できます。例えば、「道の駅ましこ(設計:マウントフジアーキテクツスタジオ)」では、1階の壁をコンクリート壁で構成し、小屋組みに大断面集成材を用いることで、木質感あふれる大スパン空間の建築物を実現しています。


「道の駅ましこ」の外観 出典:栃木県(撮影・北田英治氏)

 また、近年木造による耐火構造が可能になったため、建築基準法の準耐火建築物(ロ-1)「外壁耐火」で対象となる外壁を完全に木造で建てられるようになりました。

 しかし、耐火・準耐火構造までは求められないケースでも、防火構造が必須になる建物があります。防火構造は、告示を用いて設計する場合には真壁造とすることで、被覆をせずに木を表しにして使え、自由度のある設計に応じられます。


一般的な防火構造の例

 ここまで述べてきた通り、現在は都市木造を建築しようとする場合には法的な制約と、それをクリアするための技術上の課題がありますが、上手に解決することで、魅力的な都市木造建築物を生み出せます。

 木は、上手に育てて上手に使うことで、環境的な材料であるだけでなく、加工性と生産性にも優れているため、これまで人類とともに共存・共栄の道を歩んできました。

 近代に入ってからは、建築において木以外の鉄・コンクリートを用いたものに注目が集まってきましたが、現在は再生可能性やエコロジカルな観点から木による建築の社会的な重要性が増してきていることはこれまで述べてきた通りです。みなさまにもぜひ、木の未来と可能性、そこから生み出されてくる文化に注目していただければと思います。

著者Profile

鍋野 友哉/Tomoya Nabeno

建築家。一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYA主宰。東京大学 農学部 木質材料学研究室を卒業、同大学院修了。東京大学 客員研究員(2007〜2008)、法政大学 兼任講師(2012〜)、お茶の水女子大学 非常勤講師(2015〜)、自然公園等施設技術指針検討委員(2015〜2018)。これまでにグッドデザイン賞、土木学会デザイン賞、木材活用コンクール 優秀賞などを受賞。

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