ドローンは災害対応にどう役立つか?台風19号と福島県沖地震で見えてきた課題と可能性:Japan Drone2021(1/3 ページ)
2019年の令和元年台風第19号と2021年2月の福島県沖地震時に、福島県南相馬市とテラ・ラボがどのように連携し、災害対応にあたったのかを、南相馬市 市長の門馬和夫氏と、中部大学発ドローンベンチャー企業テラ・ラボ 代表取締役の松浦孝英氏(テラ・ラボ代表取締役)が「Japan Drone2021」のシンポジウムで報告した。両者の説明では、ヘリコプターの弱点を補い、非常時にこそ活躍の場が広がるドローンの災害対応での有効性を提言した。
ドローン国際展「Japan Drone2021|第6回-Expo for Commercial UAS Market-」(会期:2021年6月14〜16日、幕張メッセ)の最終日、展示会場に隣接する国際会議場で、国際カンファレンス「南相馬市における災害対策ドローンと行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の社会実装」が開催された。
モデレーターを務めたのは、ドローンファンド 共同創業者・代表パートナー 大前創希氏。パネリストとして、南相馬市 市長 門馬(もんま)和夫氏と、テラ・ラボ 代表取締役 松浦孝英氏が登壇した。
福島RTFを産業創出の核に据える南相馬市と、ドローンベンチャーのテラ・ラボ
南相馬市は、福島県東側に位置し、市の南部は福島第一原子力発電所から20キロ圏内に入る。現在、市は「100年のまちづくり〜家族と友人とともに暮らし続けるために〜」という政策目標を掲げ、東日本大震災と原発事故からの復旧・復興と、地域課題に応えるさまざまな取り組みを進めている。
その重点戦略の一つが、福島ロボットテストフィールド(RTF)を核とした新産業創出とIT人材の誘致だ。福島RTFでは、「ロボットの社会実装により、安全で豊かな社会の実現に貢献する」の理念のもと、テクノロジー系企業を広く募り、5Gやロボティクス、AI、IoTを活用した国内でも先進的な実験が行われている。とくにここ最近では、ドローン分野で災害対応の強化にも注力している。
テラ・ラボは、愛知県春日井市で創業した中部大学発の開発型ベンチャー。これまで、長距離無人航空機の研究開発を進めてきた。2019年2月に、福島県で開催された企業立地セミナーで南相馬市を訪問したことを契機に福島RTFへ入所。2020年9月からは、福島RTF近くの南相馬市産業創造センターを拠点に据え、市と共同で“災害対策DX”の構想を検討している。
台風19号災害調査でのドローン活用と、明らかになった課題
セミナーでは、はじめに2019年に発生した台風19号での災害調査について、ドローンを活用するに至った経緯と成果を紹介。同年10月12日夜から13日未明にかけて本州に上陸・通過した台風19号は、東北地方を中心に多大な被害を与えた。南相馬市でも過去50年に類を見ないほどの大雨が降り、経験したことのない土砂崩れ被害が発生した。
台風通過後は、災害対策本部に寄せられる情報が日々更新されるごとに、「市民の安全は本当に確保されているのか、とても不安だった」と門馬市長は振り返った。被害の全容をつかみたいと、ダメもとで市内のドローン業者らに声をかけたのが、ドローンを用いた災害調査が始まるきっかけとなった。
10月16日に、たまたま南相馬市に滞在していたテラ・ラボの松浦氏を含め6業者が集まり、調査方法が話し合われた。集まってすぐに、課題が明らかになったという。「撮影した映像をどのように共有するか、その知見を持つ業者がいなかった」(松浦氏)。
こうした状況下で、テラ・ラボの研究活動が大きな役割を果たすことになる。テラ・ラボは、2016年から愛知県名古屋市の危機対策室と、ドローンを活用した実証事業を続けており、災害時の対策本部へ情報提供する方法について研究していた。その場では、テラ・ラボが研究内容を開示・共有することで方針が固まり、ドローンによる被災地調査がスタートした。
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