20時間飛び続ける大型機で広域災害を支援、福島に未来と希望をもたらすテラ・ラボのドローン事業:Japan Drone2021(1/2 ページ)
福島県南相馬市を中心に、災害支援の研究開発を進めるテラ・ラボ。「Japan Drone2021」の出展ブースでは、災害時の情報収集用大型ドローン3機(うち2機はモックアップ)と、後方支援する移動管制システムなどを披露した。展示パネルでは、2021年秋に竣工予定の「TERRA LABO Fukushima」の基本仕様を公開。復興支援として地域企業とともに産業集積を目指し、住民が未来と希望を持てる社会とまちづくりを進めている。
ドローンの国際展「Japan Drone2021|第6回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2021年6月14〜16日、幕張メッセ)の会場入り口近くで、ひと際目を引く大型ドローンを展示していたのは、愛知県春日井市に本社を置くテラ・ラボだ。
テラ・ラボは、「宇宙から地球を考える(Think of the TERRA from the Universe.)」をテーマに、宇宙航空システム開発を行う研究開発型ベンチャー。2019年からは、地震や台風など災害発生時にドローンを飛ばして情報収集し、行政機関と情報共有しながら災害対策に活用すべく、福島県南相馬市で実証実験を繰り返している。
今展でのブースコンセプトは、「長距離無人航空機の実用化・事業化 新拠点【TERRA LABO Fukushima】〜災害対策DX実現に向けて〜」。ドローンの実機は、「TERRA Dolphin 4300」「TERRA Dolphin 8000」「TERRA Zephyr 3300」の3機を出品した。
災害時の活躍が期待される「TERRA Dolphin 4300」
TERRA Dolphin 4300は、全長2.9メートル、翼長4.3メートルの大型飛行機型ドローン。災害時に長距離で広域にわたって情報収集できる機体を目指し、研究開発を進めてきた。
TERRA Dolphin 4300の丸みを帯びた機体は、その名にもある「イルカ(dolphin)」をイメージして設計した。イルカは、「人を救う」という言い伝えがあり、「テラ・ラボにとって災害対策のシンボル」(ブース担当者)だという。
コンポジット素材を使った機体は軽量で、機体重量はわずか20キロ(ペイロード10キロ)。レシプロエンジン、水素燃料電池、ジェットエンジンを動力とし、長距離(最大航続距離1000キロ)を無人で飛行する。巡航速度は毎時100〜150キロ、最大速度は毎時250キロで、最大航続時間は10時間と長時間に及び、最大高度6000メートルまでの上昇が可能だ。
テラ・ラボはこれまで、ドローンやヘリコプターなどで空撮した被災地の連続写真や点群データをもとに3次元モデルを生成して、被災状況の把握や2次被害の予測などに役立てるサービスを展開してきた。毎時100〜150キロの速さで、長距離を安定してフライトするTERRA Dolphin 4300が実用化すれば、災害調査のさらなる効率化が期待できる。今後は、福島県で試験飛行を行い、本格稼働を目指す。
テラ・ラボが開発中の高性能2機種
大型無人航空機TERRA Dolphin 8000と、回転翼機TERRA Zephyr 3300は、まだ開発途上の機体である。そのため今回、展示されていたのはモックアップ。
TERRA Dolphin 8000の仕様は、翼長8メートル、重さ約80キロ、ペイロード約40キロと、TERRA Dolphin 4300よりもひと回りスケールの大きい設計目標をもつ機体となる。2020年秋に開催された前回の「Japan Drone2020」に展示されたものと同じモックアップとなる。巡航速度は毎時100〜150キロ、最大速度は毎時250キロと、TERRA Dolphin 4300と変わらないが、最大航続時間は20時間、最大航続距離2000キロ、最大飛行高度2万メートルの大幅な性能アップを予定しているという。
一方のTERRA Zephyr 3300は、全幅3.3メートル、重さ50キロで、ペイロードは10キロ。巡航速度は毎時15〜20キロ、最大速度は毎時35キロ。航続飛行時間は2時間で、最大航続距離40キロ、最大高度2000メートルとなる見込み。「広域は航空機型で調査し、狭域の調査やホバリングを使った詳細観測には回転翼機を用いる」(ブース担当者)という使い分けを想定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.