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住宅性能評価3項目で最高ランクを取得した木造中層賃貸マンションが稲城市で上棟プロジェクト(2/3 ページ)

三井ホームが、東京都稲城市で開発を進める木造中層賃貸マンション「(仮称)稲城プロジェクト」が2021年5月に上棟した。稲城プロジェクトは、劣化対策等級で「3」を、断熱等性能等級で「4」を、一次エネルギー消費量等級で「5」を設計段階で取得している。

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特殊なクギとパーティクルボードで壁倍率を向上

 2階には、地震などでとくに負荷がかかる階層であることを踏まえて、壁倍率が31倍の高強度耐力壁「MOCX wall(モクスウォール)」を配置した。MOCX wallは、一般的なツーバイフォー工法の枠組みに構造用面材「パーティクルボード」をクギ打ちしたもので、特殊な技能がなくても組み立てられ、大断面の木材も必要なく容易に作れ、工期短縮とコスト低減も後押しする。


壁倍率31倍の「MOCX wall」

耐力壁として設置されたMOCX wall

三井ホーム 技術研究所 研究開発グループ マネジャー 小松弘昭氏

 構造見学会で、三井ホーム 技術研究所 研究開発グループ マネジャー 小松弘昭氏は、「MOCX wallの壁倍率が高い要因の1つには、面材にパーティクルボードを使用したことが関係している。パーティクルボードは構造用合板と比べて3倍の強度があるため壁倍率をアップするのに有効だった。パーティクルボードを枠組みに固定するクギには、市販のクギ打ち機で使える独自開発の“NXクギ”を活用している。NXクギは、先端のスクリュー加工と大きな頭径で引き抜き耐力を向上させたもので、耐力壁に粘り強さをもたらす。MOCX wallの上下枠と床版との一体化には、高い接合耐力を持つ全ねじタイプのオリジナル木ねじ“パイルパイク”を利用し、地震時の大きなせん断力をMOCX wallに伝達するようにしている」と特徴を述べた。


NXクギ(左)これまで使用されていたクギ(右)

 上記のような特徴により、MOCX wallは、三井ホームがこれまで使用していた耐力壁と比較して、建物に必要な耐力壁の量を約半分に減らせ、設計の自由度を高め、有効面積の拡大にも貢献する。

 2〜5階には、地震や台風などの水平力により耐力壁に生じる浮き上がり(引き抜き力)を抑制するオリジナル金物「ロッドマン」や隣接する住戸の騒音を小さくする新仕様の界壁と独自の高遮音床「Mute(ミュート)」を完備した。


「ロッドマン」

 ロッドマンは、スピリングカプラー、スプリングパッキン、タイロッドで構成されるダイダウンシステムで、各階層の引き抜き力をタイロッドを通して直接基礎に伝達する。タイロッドは高強度の金属棒でロッド径が小さく、スピリングカプラーとスプリングパッキンは鉛直荷重や木材の乾燥収縮による建物の沈み込みに合わせて追従し施設の浮き上がりを防ぐ。

 「建築物は、耐力壁の強度が高いだけでは、地震を受けた際に耐力壁が回転しまうが、ロッドマンを活用することで、地震時に耐力壁の回転を防止できる」(小松氏)。

 新仕様の界壁は、ロックウールや強化せっこうボード、フレーム、パーティクルボードなどから成り、壁厚が約29センチでありながら壁倍率は27倍で、フレームとパーティクルボードの間に空気層を設け、遮音性能を「D-45」とし、建築学会の遮音性能基準では2級に相当する。


新仕様の界壁

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