風の影響を軽減し森林や山岳でも資材を運べるドローン、DroneWorkSystem:Japan Drone2021
ドローンメーカーのDroneWorkSystemは、吊り下げた資材の揺れや風向、風力などに合わせ、機体の姿勢を変えることで、風による影響を軽減するドローン「EAGLE-24」を開発した。
林野庁では、これまで山岳と森林で植林や植栽を行う場合に、人力で苗木や道具を運んでおり、作業員の負担となっていた。解決策として、ドローンで苗木を搬送する方法の導入も検討されたが、通常のフライトコントローラーを搭載したドローンでは、吊(つ)り下げた苗木が山の強風で激しく揺れ、機体が落下する可能性があった。
上記の問題を解決するために、ドローンメーカーのDroneWorkSystemは、特殊なフライトコントローラーを備え、山岳と森林で苗木や道具を搬送するドローン「EAGLE-24」を開発した。同社は、建設分野のドローンが集結する国際展「Japan Drone2021|第6回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2021年6月14〜16日、幕張メッセ)でEAGLE-24をPRした。
最大時速は20キロ
EAGLE-24は、運搬可能量が24キロで、最高時速は20キロを誇り、最大使用時間は20分で、専用のアタッチメントを取り付けられる。専用のアタッチメントは、素早い脱着に応じ、苗木を固定するレバー付きのフックも付いている。独自のフライトコントローラーは、吊り下げた資材の揺れや風向、風力などに合わせ、機体の姿勢を変えることで、風による影響を軽減する。
DroneWorkSystemの担当者は、「EAGLE-24は、農薬散布用のドローンを改良したドローンで、フライトコントローラーだけでなく、素材などを変更することで機体の強度も高めている」とベースとなる機体を説明した。
このドローンは、林野庁が、2020年11月10〜11日に、群馬県吾妻町の国有林で実施した苗木の運搬実験「令和2年度ドローンを活用した新たな造林技術の実証・調査事業」で採用された。
実験では、EAGLE-24と運搬可能量が15キロのドローン「EAGLE-15」を用いて、苗木を搬送。具体的には、出発地点と搬送先にオペレーターを1人ずつ配置し、苗木を運ぶ各ドローンが両エリアの中間地点にフライトで到達した時、出発地点のオペレーターから搬送先のオペレーターにドローンの操作を切り替え、オペレーターが始終目視する環境を構築し、出発地点と搬送先を往復させ、安全に苗木の運搬と積み込みを繰り返した。
また、作業効率を高めるために、両ドローンがホバリング中に人力で荷掛けと荷下ろしを行った他、安全面を考慮し、苗木を吊り下げるロープの長さを5メートル程度として、スタッフの数も5人体制とした。5人の内訳は、オペレーターは2人、荷掛けは1人、荷下しは1人、バッテリー交換など雑務全般を担当する1人。さらに、運搬可能量最大で飛行するとバッテリーの消耗が激しいため、EAGLE-24は20キロ程度で、EAGLE-15は10キロ程度の荷物を1回のフライトで運搬させた。
結果、EAGLE-15ではカラマツコンテナ苗を198分で2750本(総重量521.1キロ)を搬送し、EAGLE-24では同じ時間でEAGLE-15の2倍に相当するカラマツコンテナ苗を運べることが判明した。
「現在、EAGLE-24は、農林水産省や消防庁、警視庁から、資材の運搬やカメラを取り付け特定のエリアを監視する用途で引き合いを得ている」(DroneWorkSystemの担当者)。
EAGLE-24の価格は、機体、送信機2台、バッテリー3セット、バッテリー充電器2台、ワイヤ1本のセットで約360万円(税別)。
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