マンション再生の円滑化に向けて──法令動向を読み解く:マンション建て替えフォーラム(1/4 ページ)
戦後高度成長期に供給された多くの集合住宅が老朽化し、各地でさまざまな問題を引き起こしている。「高経年マンション」と呼ばれる老朽マンションの再生は、社会課題となり、法制度の整備や民間事業者による建て替えなど、さまざまな取り組みが活発化している。2021年6月4日に開催された「マンション建て替えフォーラム」は、各当事者が多様な取り組みについて紹介するオンラインセミナー。その中で、国土交通省 宿本尚吾氏の基調講演を採り上げる。
2021年6月4日にオンラインで開催された「マンション建て替えフォーラム」は、老朽マンションの再生に関して、国や専門家および建て替え事業者による講演を通じ、課題や制度面の整理と、建て替え推進に向けた実務面のポイント、ケーススタディーなどを紹介した。本稿では、国土交通省 宿本尚吾氏の基調講演を紹介する。
マンションの現状と未来
2019年(令和元年)末時点で、日本のマンション・ストック総数は660万戸余りとされる。住宅総数は6200万戸余りなので、10%強をマンションが占めていることになる。とくに東京23区ではマンションが住宅総数の3割を超え、一般的な住まいとして定着していると言えよう――。2021年6月4日にオンラインで開催された日本経済新聞社主催の「マンション建て替えフォーラム」で登壇した国土交通省 住宅局 市街地建築課 課長 宿本尚吾氏の講演はそうした指摘から口火を切った。
オイルショック前後からバブル期を経て、2007年頃まで、日本では毎年15〜20万戸ものマンションが供給されたが、10〜20年後にはこれらも老朽化が進む。しかも、マンションの大規模修繕や建て替えには他の区分所有者との共同作業が必要になるため、早くから備えることが重要なのだという。
宿本氏は、マンション老朽化のメルクマールとして、“築後40年”という指標を提示した。もちろんながら、築後40年で全てのマンションで建て替えが必要になるわけではない。だが、前述した通りマンション住人の意見の調整には相当の時間を要するため、建て替えの必要が生じてから着手するのではロスが多過ぎる。
加えて、築後40年経過した高経年マンションは現在91.8万戸だが、10年後にはこれが213.5万戸、20年後には384.5万戸と急増する予測。まさに、膨大な数のマンションが等しく年老いていくことになるのだ。
マンション建て替えの状況
続いて紹介したのは、マンションの建て替えに関する状況について。宿本氏によると、国内のマンション建て替え実績はこれまで250件余りで、戸数にすると2万戸弱に上る。マンション建て替えの手法は、「マンションの建て替え等の円滑化に関する法律(以下、マンション建て替え法)」に基づく、建て替えとこれに因(よ)らない建て替え、すなわち「建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)」に準じた建て替えの2つに分類でき、2005年度以降は、前者のマンション建て替え法に基づくものが大きく実績を伸ばしているとした。
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