建機の遠隔操作ロボを現場事務所で操縦できる新たな通信システム、アクティオ:第3回 建設・測量 生産性向上展
アクティオは、専用のコントローラーにより、機種を選ばず建設機械の遠隔操作が可能な「アクティブロボ SAM」の遠隔操作できる範囲を広げるシステムを開発し、2021年1月にレンタルを開始した。
自然災害が発生した場所や土砂崩れなどの事故が起きやすいエリアで、建設機械を使用して復旧、建設、土木の作業を行う際にはオペレーターに危険が伴っている。
解決策として、コーワテックは、機種を選ばず建機の遠隔操作が可能な「アクティブロボ SAM」を開発した。アクティブロボ SAMは、建機の操縦席に搭載することで、建機から離れた場所でも、920MHz無線通信を介して、専用のコントローラーによりロボットをコントロールし建機を操作できる。遠隔操作に応じる範囲は約300メートル。
しかし、オペレーターとアクティブロボ SAMを取り付けた建機の距離が250メートルに達すると、オペレーターは、目視で建機の周囲や状況を確かめられず、災害現場などでは使用することが難しかった。さらに、自然災害の規模が大きいとこれまでの遠隔操作範囲では対応が困難だった。
上記のような、問題を解消するために、アクティオは、Wi-Fi端末を活用し、重機を遠隔操作するシステムを開発して、2021年1月にレンタルを開始した。同社は、「第3回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO)」(会期:2021年5月12〜14日、幕張メッセ)に出展し、新システムをPRした。
現場事務所がインターネットに接続していれば遠隔地でも建機を操縦可能
新システムは、現場に専用のWi-Fi端末や無線カメラ、ドローン、無線対応建機、PC、アクセスポイント、LANケーブルで電力を供給する装置「PoEハブ」を配置し、事務所に専用のWi-Fi端末やアクティブロボ SAMのコントローラー、PC、PoEハブを設置することにより、事務所内でドローンや無線カメラで取得した現場の映像をPCで見つつ、専用のコントローラーで、アクティブロボ SAMを動かし、ロボットを装着した建機を操作できる。
無線カメラは無線対応建機のキャブ内に配備され操縦席からの現場を撮り、ドローンでは建機の周囲を撮影する。専用コントローラーからの操作信号は、Wi-Fi端末を介し、現場のアクセスポイントを経由して、アクティブロボ SAMに送信される。現場のドローンや無線カメラの映像は、専用のWi-Fi端末を通して、事務所のPCに送られる。専用Wi-Fi端末の最大通信距離は10キロ。
アクティオの担当者は、「今回のシステムでは、現場事務所がインターネットにつながっていれば、インターネットと専用のWi-Fi端末を経由して、遠隔地のオペレーターが、現場のドローンと無線カメラの映像をPCで閲覧しつつ、アクティブロボ SAMのコントローラーで、操縦席に取り付けたロボットにより建機を遠隔で操縦可能だ。また、LTEなどの電波が届かない現場でも、事務所がインターネット環境を備えている場合は、専用のWi-Fi端末を用いて、インターネット上にある動画の視聴やSNSの利用を現場でも行える」と活用方法を説明した。
関連する情報について、「現在、アクティオでは、LTE回線を利用した通信システムによる重機の低遅延遠隔操作を実証実験している。このシステムは、LTE回線を用いて、アクティブロボ SAMのコントローラーとロボットを通信するもので、Wi-Fi端末を使用したシステムと同様に、遠隔地にいるオペレーターが無線カメラの現場映像を確かめつつ、建機を操れる。通信速度は5Gに相当するため、コントローラーに入力した操作信号がアクティブロボ SAMの動作に反映される時間が短く、スピーディーに建機を動かせる」(アクティオの担当者)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 建機の遠隔操作、次なる躍進のカギは“5G”と“VR”
KDDIは、大林組およびNECと共同で実証をしている建設機械の遠隔操作に関して、「マイクロウェーブ展2017」で紹介を行った。5G(第5世代移動通信)とVR(仮想現実)で、さらなる建機遠隔操作の効率化を目指す。 - 山岳トンネル工事で切羽のコンクリート吹付を遠隔操作
大成建設は、山岳トンネル工事で、切羽(掘削面)のコンクリート吹付を遠隔化する「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発した。 - 「淺間山噴火」でも導入、建機の機種を問わない遠隔操作の人型ロボ「KanaRobo」
建機に搭載して遠隔操作が可能になるカナモトの双腕双脚ロボット「KanaRobo」は、災害時の危険エリアでの復旧作業以外に、平常時の工事現場でも適用することで、省人化や省力化につながることが期待されている。 - 熊谷組が開発した建機をVRで遠隔操作する新技術、傾き・振動・音も体感
熊谷組は、遠隔操縦室内にいるオペレーターに、VRを介してコクピット内からの視界の他、建機の傾きや振動、音を提供し、搭乗操作に近い感覚で、オペレート可能な安全かつ効率の高い無人化施工が実現するシステムを開発した。 - 熊谷組が小断面トンネル向けの積み込みシステムを開発、遠隔操作に対応
熊谷組は、積み込み機や鋼車積込搬送機(トレンローダ)、鋼車運搬機で構成される小断面トンネル向け積み込みシステムを開発した。システムの操作は、カメラやモニター、対象物との距離を色で見える化する「遠近距離可視化ガイダンスシステム」を用いて、遠隔で行える。 - 熊谷組とNECが“ローカル5G”活用で、VR遠隔操作の無人化施工に成功
熊谷組とNECは、ローカル5Gを活用し、4K映像と建機の傾きなどといった動きの情報伝送、VRでの遠隔操作を組み合わせた無人化施工の実証実験を行った。低遅延で大容量な通信を可能にするローカル5Gを活用することで、ネットワークの帯域不足といった従来の課題を解決し、4K映像や動きなど多様な情報をリアルタイムに伝送することで、実際に建機に搭乗したときに近い環境を構築することを目指す。