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古河電工のエネルギーインフラ事業、2020年度はコロナの影響で営業利益は19億円の損失産業動向(2/3 ページ)

古河電気工業が展開するエネルギーインフラ事業の2020年度実績は、新型コロナウイルス感染症の影響や新規材料の強化費用といった特殊要因が作用し、売上高は前年度割れの1009億円にとどまり、営業利益は19億円の損失となった。

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国内再エネの市場規模は2025年度に500億円

 説明会の後半では、古河電工の電力事業と産業電線・機器事業の展望について、同社の西村氏と中里氏が触れた。


古河電気工業 電力事業部門長 西村英一氏 

 西村氏は、電力事業の周辺環境について、「電力会社向けのマーケットである国内超高圧地中線市場の規模は、OFケーブル※1からCVケーブル※2へのリプレースによる幹線更新需要の増加に伴い、2025年度には2020年度比で200%の200億円になると見込まれている。しかし、ニーズが増えた影響で、工事能力の逼迫(ひっぱく)が顕著になっており、古河電工では電力会社と長期計画を共有し、需要に対応している」と対策を述べた。

※1 OFケーブル:導体上に絶縁紙を配置し金属シースを施した上でビニールなどのシースを設けたケーブル

※2 CVケーブル:電線を架橋ポリエチレンで覆って絶縁したケーブル

 加えて、「海底線と地中線の市場規模は、政府が2020年7月に再エネ海域利用法により3つの地域を指定し、同年11月に発電事業者を公募したことを踏まえると、海底線と地中線のニーズは2023年度以降に増え、2025年度には2020年度比500%の500億円になる見通しだ」と今後の動向を解説した。


国内超高圧地中線(左)や海底線と地中線(右)の市場規模 出典:古河電気工業

 再生可能エネルギーに関しては、政府が掲げる方針「2050年カーボンニュートラル」で、洋上風力発電の発電量を2020〜2045年に45ギガワットにすることを計画しており、予定されている洋上風力発電所のエリアが東北や北海道、九州に集中していることから、電力の大消費地である首都圏や関西圏などへ送電する広域連携線の整備が検討され、古河電工に課題の解消やケーブルの開発といった期待が高まっている。

2025年までの電力事業の重点施策

 上記の周辺環境を考慮し、電力事業では、国内超高圧地中線や海底線と地中線、アジア向け海外海底線の展開を主力事業に据えて活動し、国内ターゲット市場の売上比率を2020年度比で25%増となる約65%を目指す。

 この目標を達成するために、ケーブル製造能力と施工能力の増強や技術開発の推進、再生可能エネルギー・直流事業の発展に注力する。

 ケーブル製造能力の増強では、2025年度までにケーブル製造能力を2017年度比で2倍にする方針だ。具体的には、2018〜2025年に累計で150億円規模の設備投資を同社の千葉工場に実施し、絶縁押出し長尺化によるケーブルの接続部削減で生産性を改善して、接続部カットで長尺海底線製造能力を2.5倍に上げ、設備更新・システム化投資を継続し生産性を2倍に高める。


千葉工場主要設備投資計画のグラフ 出典:古河電気工業

 施工能力の増強では、電力会社向け幹線の更新需要増と再生可能エネルギー案件向け工事増加に対応するために、2025年度までに施工能力を2017年度比で2倍とする。工事施工能力を上げるために、採用活動強化による人員の補強、エンジニアの待遇改善、ケーブル接続技能の向上といった同社直営班の増強や提携協力会社数の拡大、施工性の高い接続部品の導入、工事需要の高い地域への拠点開設による顧客サービスの向上と効率化を行う。

 技術開発の推進では、浮体式洋上風力発電向け海底送電システムや直流押出絶縁ケーブル、直流深海ケーブルの開発、認証の取得を進める。浮体式洋上風力発電向け海底送電システムでは、浮体式洋上風力発電向け超高圧ダイナミックケーブル※3と緊張係留方式(Tension Leg Platform)用海底送電システム※4を開発中だ。

※3 浮体式洋上風力発電向け超高圧ダイナミックケーブル:洋上変電所から陸上に送電するもので、130〜250キロボルトの電力供給に対応する

※4 緊張係留方式:浮体の優れた動揺特性を生かし、大型風車を搭載する浮体に必要な構造信頼性を確保する方式。緊張係留方式は緩係留方式に比べ、海域占用面積を減らせるため、漁業や船舶運航への影響を抑えられる


浮体式洋上風力発電向け超高圧ダイナミックケーブルの利用イメージ 出典:古河電気工業

 長距離・大容量の送電に適した直流押出絶縁ケーブルの開発では、海底と陸上向け直流525キロボルト押出絶縁ケーブルシステムの長期実証試験を完了し、直流押出絶縁ケーブル用材料の安定供給体制を構築している。

 深海1500メートルでの敷設に応じる直流深海ケーブルでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行っている多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発に参加し、ケーブル軽量化技術や高張力に耐える敷設技術の開発を推進している。

 認証の取得では、海外海底線や国内洋上風力向け海底線における国際規格への対応などを進めている。

 再生可能エネルギー・直流事業では、国内洋上風力産業に対し、高品質なケーブルの製造と供給や国内外でのプロジェクト遂行で得たノウハウを活用したエンジニアリングサービスで収益拡大を図る。


再生可能エネルギー・直流事業の見通しのグラフ 出典:古河電気工業

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