【新連載】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト:AIブームの潮流:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(1)(2/2 ページ)
ここ数年、国が旗振り役となって推進しているi-Constructionの進捗により、土木分野でのAI活用が進んでいます。本連載では、「土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会」で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIをどのように使いこなしていくべきかという観点から、最新の研究論文をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
AIによる「物体検出」
上の図は、写真の中から橋をAIで検出した例です。この橋を示している枠を“バウンディングボックス”と呼びます。このように、画像の中で、どこが橋なのかを見つけることができます。
いろいろな応用で、画像の中から対象物を見つけるのは基本の操作になります。例えば、構造物や道路の舗装などの損傷を検出する方法としてよく使われています。
AIによる「セマンティックセグメンテーション」
“セマンティックセグメンテーション”とは、物体検出と似ているのですが、写真の画素(ピクセル)ごとにそれが何であるかを求めるものです。上の写真にAIを適用した結果が下の結果になります。緑の部分が橋として検出された部分です。
概(おおむ)ね橋を検出できていますが、後ろの建物も橋として検出されてしまっています。斜張橋のような橋だとタワーもありますから、橋の一部として認識されたのかもしれません。
データを増やしたり、また、セマンティックセグメンテーションの方法も新しいものが次々と生まれていますので、それらを取り入れたりして精度を上げていくことができます。上記の検出結果では、橋以外にも、木や手すりが検出されてしまっています。
この方法でも、構造物の中の損傷を検出するAIを作ることができます。コンクリートのひび割れを検出する方法としてセマンティックセグメンテーションが用いられることも増えています。
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