3.11復旧工事など災害対応で活躍したCIM、岩手・地方建コンの奮闘:Autodesk University Japan 2019(1/6 ページ)
建設コンサルタント業務を手掛ける昭和土木設計は、2014年からCIMへの取り組みを進めてきた。その取り組みの成果が橋梁設計における「3D完成形可視化モデル」だ。ドローン(UAV)を使って3D空間の計測データを取得。このデータに基づき3Dの地形モデルを作成し、3次元の設計モデルと連携・統合することで、関係者間の情報共有の精度を高めた。
オートデスクは2019年10月9日、建築や土木などのユーザー事例、最新ソリューションを紹介するプライベートイベント「Autodesk University Japan 2019」をグランドニッコー東京 台場で開催した。
会期中に数多く繰り広げられたセッションの中で、昭和土木設計 ICT推進室の佐々木高志氏と藤原聖子氏は、「地方企業も頑張ってます!〜大きなBIM/CIM、小さなBIM/CIM」と題した講演を行った。橋梁(きょうりょう)設計におけるBIM/CIMの取り組みや東日本大震災の復旧事業、台風による河川災害の改良復旧計画などの事例を解説した。
3Dモデルで現況と施工後を可視化
冒頭、藤原氏は、「2019年はCIMの利用が推奨されてから7年目で、国土交通省がi-Constructionの推進を始めて4年目に当たる。取り組みがスタートして、一定の期間が経過しているが、業界では、BIM/CIMやi-Constructionを理解していない人が多い。今回、ワークフローの大部分でBIM/CIMを用いた事例だけでなく、業務の内容に応じて部分的にBIM/CIMを有効活用したケースも取り上げるので、参考にしてもらいたい」と述べた。
昭和土木設計は、岩手県に本社を構える社員数約40人の建設コンサルタント。2013年にCIMワーキンググループ(WG)を社内に発足し、2015年にはICT推進室を組織した。
CIM WGは、「Autodesk Creative Design Awards 2015 CIM部門グランプリ」や「土木学会東北支部 平成27年度技術研究発表会 技術開発賞」を受賞しており、ICT推進室は、東北地方整備局主催の「EE東北’19 UAV競技会」での総合部門優勝や国土交通省i-Construction推進コンソーシアムでの事例発表といった実績がある。
講演ではまず、Autodesk Creative Design Awards 2015で、CIM部門グランプリを獲得した2014年に取り組んだ景勝地における橋梁景観設計の事例について説明。このケースは、岩手県岩泉町大川七滝で、ドローンを使った空中写真測量で現状の地形データを取得し、3Dモデル化して、複数案の架橋位置の検討を行なった。
橋梁の形式についても、3Dモデル化し視認性を高めることで、ランドマークとしての景観の比較検討に活用。「橋梁の形式や地形データを3Dモデル化することで、協議の場において、眺望や利便性、洪水時の状況、周辺構造物、既存道路との関係について、関係者と円滑に話し合いができた」と藤原氏は当時を振り返った。
作成した3DCADデータは、地元の学生の協力のもとVR化。施工して終わりではなく、施工後も活用していけるCIMならではの事例として、3DCADデータは子ども達に向けた建設業のPRイベントなどで現在も使われている。会社のHPでもこの動画を公開中だ。
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