世界の建設用ドローン市場を調査、市場規模は2027年までに119億ドルに到達を予測:調査レポート
Report oceanは、世界における建設用ドローン市場の動向を調査し、マーケットの規模が2019年から2027年までに119億6860万ドルに達することを予測した。
Report ocean(レポートオーシャン)は、世界における建設用ドローンマーケットの課題や競争環境、脅威などをまとめた「建設ドローン市場調査レポート」を、2020年12月12日に発表した。
急激な人口増加と急速な都市化により世界中で住宅と非住宅の建設が増加
レポートでは、2019年における建設用ドローンの世界市場規模を48億ドルと評価し、2019年から2027年までには市場規模が119億6860万ドルに達すると予測しており、2020年から2027年までの年平均成長率(CAGR)は15.4%を見込んでいる。
世界で建設用ドローンの需要が伸長する要因には、急激な人口増加と急速な都市化により、世界中で住宅と非住宅の建設が増加し、土地と構造物の調査と検査のニーズが高まっていることがある。一例を挙げると、オーストリアに拠点を保有する建設会社のSTRABAG(ストラバッグ)は、道路やパイプラインの調査を行うために、中国のドローンメーカーDJI製産業用ドローン「DJI Phantom(ファントム) 4RTKドローン」を配備した。
また、不動産会社では、航空地図や3Dモデルの作成とマーケティングを目的に、建設現場やリゾート、空き地の写真撮影に建設用ドローンを使用している。例えば、2017年6月に、米国に本社を構える不動産会社のRE/MAX(リマックス)は、米国に拠点を配置するドローンサービスプロバイダーのDroneBase(ドローンベース)との戦略的パートナーシップ締結を発表し、RE/MAXで働く不動産専門家に航空画像を撮るための建設用ドローンを提供した。
世界における建設用ドローンの法規制に関しては、多くの国で、住民の安全とプライバシーを確保するために、ドローンの運用に関連する規則や規制を設けている。例えば、2020年7月に、欧州連合航空安全機関(EASA)は、商用と非商用のアプリケーションでの安全で確実な運用を確保するためのドローンに関する欧州規則を発表。一方、2018年9月には、欧州の民間航空局長(DGCA)が、検査や写真撮影、配送作業でのドローンの使用を承認した。
ドローンのテクノロジーについては近年、グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)やグローバルポジショニングシステム(GPS)、地理情報システム(GIS)、モノのインターネット(IoT)、熱画像、人工知能(AI)などの高度な技術がドローンにより統合されているという。例えば、2019年10月に、ハードウェアやソフトウェアのサービスを展開する米メーカーのTrimble(トリンブル)は、衛星ベースの測位を可能にするGNSSボードを発売した。
建設ドローン市場の主要なプレーヤーに関しては、業界のニーズに対応するために、新たなドローンの開発を継続している。一例を挙げると、2020年4月に、DJIは産業用ドローン「DJI Mavic Air 2」をリリースした。DJI Mavic Air 2は、住宅建設現場の航空写真とビデオ監視用に8GBのオンボードメモリストレージと3500メートルアンペアアワーのバッテリーを備えている。
上記は、建設ドローン市場の成長に貢献すると予想されている。
建設ドローン市場の拡大を妨げる要因について、レポートでは、建設用ドローンの設計、開発、運用を実現する熟練した人材の不足と、建設用ドローンのカメラやバッテリー、リモコン、プロペラ、GPSアンテナといった高価な部品の価格変動だと指摘している。
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