ビルの省エネに効く「直流配電」、三菱電機が本格展開:省エネビル
ビル設備に関する機器の多くは直流電力で稼働している。しかし配電システムが交流のため、実際に電力が使われるまでには交流から直流への変換を行っている場合が多く、電力損失が発生している。三菱電機はこうした変換の回数を減らし、ビルの省エネを図れるスマート中低圧直流配電システム事業を本格的に展開する。
三菱電機は2016年7月27日、DC1500V(ボルト)以下のスマート中低圧直流配電システム事業のトータルブランドを「D-SMiree(ディースマイリー)」とし、本格的に事業展開を開始すると発表した。ビルやデータ・センター、駅、工場などの省エネ需要を見込み、2025年度までに売上高100億円を目指す計画だ。
「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」などを始め、さまざまな建築物をより省エネにしていく動きが進んでいる。それに伴い太陽光発電などの発電設備や蓄電池といったエネルギー関連機器を建築設備の1つとして取り入れる事例も増えてきた。
こうしたエネルギー関連機器の多くは直流で発電・蓄電されている。一方、電力を消費する側のLED照明やサーバ、換気扇といった機器は、多くが直流電力で動作している。しかし配電システムは交流であるため、発電側では直流から交流へ、電力を消費する側では交流から直流への変換が必要になっており、変換の度に電力損失が発生している。結果的に建築物全体のエネルギー効率を落とす一因となっている。
三菱電機の中低圧直流配電システムD-SMireeは、こうした直流/交流変換の回数を減らし、直流電力をそのまま供給することで系統全体の消費電力を削減できるシステムである(図1)。直流配電技術だけでなく、電力需要に基づく蓄電池制御技術など、スマートグリッドの構築に関連した技術も加えている。
同社では受配電システム製作所(香川県丸亀市)の構内に、約5億円を投資して「中低圧直流配電システム実証棟」を建設している。ここで2016年7月から開始した380V級の直流配電システムの実証結果を基に、まずは380V級システムを市場投入する。2017年度から1500V級まで適用範囲を拡大し、国内・海外市場に展開していく方針だ。
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