“座礁事故”を事前に防ぐ、ウェザーニーズの世界初を謳う海難事故のアラート通知サービス:GIS
スエズ運河での大型コンテナ船「Ever Given」が座礁し、1週間に及ぶ通行停止に陥ったような座礁事故を防ぐため、リアルタイムに海難事故のリスクを船舶や運航管理者へアラート通知するサービスをウェザーニューズが2021年5月から提供する。
ウェザーニューズは2021年4月5日、重大な海難事故の一つ“座礁事故”への対策として、海運業界向けに「NAR(Navigation Assessment & Routeing)サービス」を開発したと発表した。NARサービスは、船舶はもちろん、陸上の運航管理者や関係各社に対しても、船舶が座礁する危険性を自動検知して通知する世界初を謳うサービス。
船舶の航路データをベースに、浅瀬や漁船混雑エリアなど、危険性の高い区域を航行した場合には、船舶や運航管理者に自動でアラート通知を送ったり、サービス画面の地図上で船舶を赤く表示したりする。サービス開始は2021年5月からの予定で、国内外の外航海運大手船社を中心に、船主・船舶管理会社での採用が見込まれている。
近年、世界各地で海難事故が多発しており、座礁事故は重大な海難事故に該当する。現在、海運業界では浅瀬の航行は船舶に任せられているが、船員の業務負担増によるヒューマンエラーの発生が事故の一因といわれている。このため、船舶の動静や航海リスクを監視する陸上の運航管理者が、船舶の座礁リスクを把握したいというニーズが高まっている。
しかし、現状では、陸上から船舶の座礁リスクを把握するシステムは存在せず、多くの船舶からリスクのある船をリアルタイムに検知することが難しく、課題となっていた。そこで、ウェザーニューズは、陸上からの安全監視サポートを高度化するため、陸上の運航管理者向けに、船舶の座礁リスクを自動検知・通知する「座礁対策支援サービス」を開発した。
NARサービスは、航海前・航海中の航路データや船舶の位置をリアルタイムにモニタリングし、船舶が浅瀬や漁船混雑エリアなど、座礁する危険性の高い区域への接近を計画したり、実際に接近した場合に、船舶と運航会社、船主などに自動でアラート通知を送る。
危険検知のベースとなるデータは、船舶の航海計画をはじめ、ウェザーニューズ独自の航路データ、風、海流、波などの高精度な気象・海象データ、2分間隔で取得する船舶の位置情報及び海図、航行警報、水深20メートルで過去に船舶が航行していない区域をまとめた座礁リスク区域データベースなど、航海に必要なナビゲーションデータを組み合わせて監視。そのため、航海計画からの乖離(かいり)や座礁事故発生の可能性を事前に検知することが可能になる。航路データには、船舶の航海計画に加え、年間1万隻の船舶を支援している同社の航路データも使用する。
今後は、台風接近時の強風による錨(いかり)を下ろしたまま流される“走錨(そうびょう)リスク”、荒天時の船体動揺などの通知も追加し、座礁対策だけでなく、航海リスクへの対策支援まで拡張していく。
また、ウェザーニューズは2022年までに、温室効果ガスの排出削減など海運の環境貢献を支援するざまざまな「環境運航支援サービス」を順次リリース。座礁対策の支援は、安全対策にとどまらず、海洋環境の保護につながることから今回のサービスを「環境運航支援サービス」の第1弾と位置付け、CO2などの温室効果ガス削減にも配慮した新たなサービスを展開していくとしている。
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