「デジファブで建築の民主化を」VUILD秋吉代表が拓く建築ファブの夜明け【後編】──“コンピュテーショナルデザイン”との融合:ニューノーマルを生きる建築のRe-build(2)(3/4 ページ)
DIYの下地が無い日本でも欧米に遅れること、都市の中で市民誰もがモノづくりを行える工房「FabLab(ファブラボ)」が各地に開設されてから数年が経つ。建築の領域では、マテリアルを切削や積層して形づくる3Dプリンタが、ゼネコンを中心に研究されているが、業界の裾野まで浸透するには、海外とは異なり法令規制など幾多の課題が立ち塞がっているため、まだ時間を要するだろう。しかし、デジファブによって、建築の産業構造そのものを脱構築し、建築モノづくりの手を市井の人に取り戻そうとする意欲的な建築家 秋吉浩気氏が現れた。
デジタルファブリケーション×コンピュテーショナルデザインの融合
2020年1月22日〜24日にパシフィコ横浜で開催された「SC BUSSINESS FAIR2020」で、乃村工藝社が企画・プロデュースしたブースでのコラボレーションでは、曲面などを採り入れた大規模な自立式木質空間のパビリオンを設計。地域産材を用い、コンピュテーショナルデザインとデジタルファブリケーションを展示会の空間演出として融合させた。
このときの設計手法は、乃村工藝社が描いたシェル構造の基本概形に対し、VUILD ARCHITECTSがプログラムを組み、実現可能な幾何学の形状に落とし込む実施設計を担った。どういうパーツの割り当てであれば材木が少量で済み、工数も最適なのかを探り、部品ごとにプログラム上でナンバリングして、現場では組み合わせるだけで完了。まさに、設計段階のコンピュテーショナルデザインと、その先のデジファブ(製造段階)がハイブリッドされている方法論だからこそ実現したプロジェクトとなった。
乃村工藝社が「SC BUSSINESS FAIR2020」で展示したコンピュテーショナルデザインと国産材による次世代のサステナブルな木質空間 企画・プロデュース、施工監理、プロジェクトマネジメント:乃村工藝社/基本設計、クリエイティブディレクション:乃村工藝社 NOMLAB/構造検討:構造計画研究所/実施設計、構造設計、部材加工:VUILD/現場設置:高千穂プロダクツ
コンピュテーショナルデザインのメリットについて秋吉氏は、「WordやExcelのコピー&ペーストのように、1度プログラムを作ってしまえば、別の類似する構造物へも“再利用”が可能なことにある。次の展開では、EMARFのサービスとしてコンピュテーショナルデザインをパッケージ化する構想を描いており、そうなればVUILDがプログラムを構築してユーザーに提供するといった会社としての業務拡大の可能性も見込める。設計業務はこれまでアナログだったが、もっとITよりのビジネスモデルを創出する可能性を秘めているのがコンピュテーショナルデザインの魅力」と語る。
さらに「システムを提供することが可能になれば、設計事務所や建設会社にとってはコンピュテーショナルなデザインが得意な人材を自社で抱え込まなくても、デジタル建築に挑戦できるようにもなる」と、コンピュテーショナルデザインが建築の産業構造すらも変える可能性があることを示唆した。
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